2013年6月1日土曜日

原発推進の本性を現した安倍政権

「安倍政権が6月にまとめる成長戦略の素案に「原発の活用」を盛り込み、原発再稼働に向けて「政府一丸となって最大限取り組む」と約束することがわかった。東京電力福島第一原発事故を受けて脱原発を求める声は根強いが、安倍政権の経済政策「アベノミクス」で目指す経済成長には原発が欠かせないという姿勢を鮮明にする。

 素案は、成長戦略をまとめる産業競争力会議で5日に示され、12日までに正式に決めたうえで、14日にも政府方針として閣議決定する。成長戦略に「原発の活用」が入れば、中長期にわたって原発に頼る経済・社会を続けることになる。」朝日新聞 5月31日

昨日の朝日新聞トップ記事だ。朝日新聞は安倍政権成長戦略の素案を入手し、報道したとしていて、それは他のマスコミ紙にはないことから、スクープなのだろう。いや大スクープなのだ。これを見てショックを受けたのは私だけではあるまい。

自民党は先の選挙ではこの原発問題、当時のあの官邸前の反対デモのこともあってそれは一種のタブーだった。そんなものが選挙の争点になってはかなわない。過去の自公政権が進めてきた原発政策自体は否定はしない、出来ないものの、従来通りの積極的推進ということについては、より慎重なスタンスで選挙に臨んだのだ。

そして選挙に圧勝、安倍政権誕生後も、原発については、安全確認確保を進めながら、慎重に稼働再開を進める程度のスタンスであったのだ。

TPPのことも同じだ。選挙前、選挙中も積極的参加ということではなかった筈が、政権発足後の支持率の高さを背景に一気に参加交渉にまで踏み込んでしまった。TPPのことはまあいいだろう。こちらは元々国論が二分していた問題であり、しかもなにしろ今は参加交渉を始めるだけだということもあった。交渉の中で、国益は断固守るという安倍首相の言い分もあって、世論はまあそれでいいだろうということになった。

TPP参加交渉に関しては、私自身、仮にそれで一時的に大変なことはあっても、長い目でみればそれは国益に敵うことであり、その意味では、安倍政権、自民党の少々ずるいやり方も許される、許さざるをえないという感じであったのだ。

ところがこの原発推進のことは話は違う。それはアベノミクスの三本の柱、最後の一番大切な成長戦略の柱として位置づけるというから、ええっ、と驚いた。先の選挙前も、選挙中も、それ、原発推進のことなど全く影を潜めてはいたはずだ。もちろん自民党の本音は原発推進にあること位は容易に想像できる。ただ衆院選に勝利し政権奪取したものの、夏の参議院選挙で勝つまでは原発推進のことなど敢えて表面には出すまいと思っていた。

第一、福島原発のその後の深刻な状況はなんら根本的に変わっていないない。敦賀原発の一号機だかの下の断層が活断層だと判断され、事実上廃炉だといういうことも出てきた。南海トラフの大規模災害発生が起こる可能性が大、その災害対策をどうするかの報道もあった。もしそれがあったら、海岸線に面する静岡の原発など一体どういうことになるのか、それがあるとこの国は想像を絶する深刻な事態に遭遇することになる。そのことについてあまり解説記事がなかったのが不思議だ。

その一方で安倍首相トルコ、アラブ諸国、インドなどへの原発輸出の話をどんどん進めてきた。日本は地震国ですので、原発推進は慎重にやっていますが、お国には日本の原発技術が役立ちますので是非、とやってきたのだろう。それは理に適わぬことだという批判もあったが、なにせ国とっては大きなカネを稼げることになる、なんとなくそれでいいんじゃないのという雰囲気になっていた感がある。

最近の株の乱高下、それが安定して上昇するためにはアベノミクスの最後の柱、成長戦略がどんなものであるべきかが最後の決め手になるということだった。私自身、いろいろ中身はあるが、概して安倍政権がその戦略の中で目指していること自体にそんな大きな問題は無いという印象を持っていたわけだ。

その中でも重要な柱、エネルギー政策をどう進めるか、アメリカやロシアから石油に変わるオイルシエールや天然ガスを輸入を進めるという報道があった。ただ前民主党政権が積極的に進めようとしていた自然再生エネルギーの開発、推進のことについては、どうも安倍政権あまり積極的な取り組みの計画はないのかという印象はあった。どうしてそうなのだろういう疑問も抱いていたのだ。

そしてそれが一つ明らかになった。安倍政権、要するに過去の自民党の重要なエネルギー政策である原発推進路線を再びその柱にしようとしているのだ。参院選まではそれはあまり鮮明にしないで、選挙に勝利後その路線で突っ走ろうということだったようだ。

それがばれてしまった今それでは困ると考えているようでもない。それはあえて原発推進反対派の朝日にそのことをスクープさせ、それである意味反対世論のショックを和らげ、その上で参院選には原発推進路線で正面突破しようということなのかもしれない。国民もなめられたものだ。

なにせ「熱しやすく冷めやすい」国民なのである。しかも、変化を好まぬ「ものわかりがいい」国民なのだ。それぞれ目先の生活さえよくなれば、あの福島の深刻な原発の事故のことなどもはや忘れてしまったという印象が強い。だから安倍首相やその周辺、ここで、改めて原発の積極的再開を宣言しても、大きく選挙に影響することはないくらいの読みをしたのかもしれない。

いや、言いにくいことだが、そう読まれてもおかしくないのが、日本国民の性格であることを認めざるをえない面はある。

改めて原発反対を叫んで官邸前デモに参加するかしないかではない。来るべき参議院選挙では改めて、原発推進を掲げる安倍政権にノーを突きつける、それが一つ最大の争点になる選挙にすべきなのだ。本当は先の選挙がそうであったはず。ところがそうはならなかった。自民党にうまくかわされてしまった。

安倍自民党の原発回帰路線が明らかになった以上、今度こそ原発推進か、廃止かが最大の争点になるべきだ。それはまさに日本国家の存亡が掛かっているといって過言ではないはずである。

tad

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