来年のブラジル世界選手権出場に世界で一番で名乗りをあげたのだ。サッカーというとどちらかというと、必ずしも体力的にはそれ向きでないと思われるスポーツで、女子サッカーでもそうであったが今度は、日本の男子サッカーが世界中の注目を引いたのだ。その結果ある意味当然と言えば当然、というのも、今や三十数人もの日本選手が、サッカーの本場欧州の名門チームで活躍しているのだ。本田、香川、長谷部など、選りすぐりの選手が集結した日本チームなのである。それ位の結果を残しても何の不思議もない。
そうした個々の選手の技、それを集めてのゲームで戦力的にオーストラリアにそう簡単に負けるわけがない。実際に、あの試合、日本チームが先取点を取り勝利してもおかしくない場面は多々あった。結果はああいうことだった。言葉で言うと簡単だが、そういう意味ではラッキー、アンラッキーの場面、サッカーの神様は平等に与えてくれたのだろう。いずれにせよ、実力的には均衡する両チームのこと、試合は引き分けに終わった。そのことに選手たちは、そのことにはある意味納得しているようだ。結果はラッキーでよかったが、しかしこんなことではいけないという自覚がきちんとあるという意味だ。
出場権を得たことにはもちろん不満のあろうはずがない。しかし宿敵とは言え、オーストラリア程度の世界ランキングチームに勝てなかったのだ。日本チームはまだその程度なのだ。そんなことでは、世界選手権で優勝など目指せるわけがない。それが狙えるようになるためには一体なにをすべきかである。
本田、香川、長谷部など主力選手が一様に、語っていたことは、当たり前のことかもしれないが、個々の力、自らの技、力量をさらにレベルアップしなければならないということだった。それはすべて自分のためであり、それを個々に磨く事が、ワールドカップに備えるすべてのことだという趣旨だった。本田はそれを、「自立」という言葉で表現していた。
サッカーに限らないがよく、日本チームが強いのはチームとしての組織力だなどという。チームの選手達にとって組織力の大切なことなど改めて言われるまでもないし、語るまでもないことなのだろう。日本チームの主力選手達はみなチーム力、組織力ということを含めて、それを最大限発揮し勝利を得るためにはまだまだ個の能力未熟だということを語っているのだ。個々の能力をそれぞれの立場、持ち場でさらに磨くことが全てだということを言っているのだ。その結果は自ずからついてくる。
そのことと、そこで日本の主力選手たちが、それぞれヨーロッパ各国の強豪チームで活躍しているという無関係でない。実はその環境こそが、日本チーム、個々の選手にとっては最大のメリットなのだ。
日本チームを離れてそれぞれ所属チームに戻ったとたん彼らはそれぞれそのチームの一員となる。そのチームの中で自分が果たさなければならない役割がなんであるか、チームメートの信頼を得るために何をやったらいい、その役割を果たすことがまさにその個を磨く全てなのだ。彼は世界でも一流クラスの選手達とその行動を共に出来るのだ。そしてチームの一員としてそのチームが目指す勝利を喜び仲間とそれを分かちあう。その時何も日本チームのことなど考えているわけでない。
そのチームが英国であろうと、ドイツであろうと、イタリヤであろうとロシアであろうとなんの関係もないのだ。自分がそのチームの勝利のため貢献できた満足感に浸るのだ。他の世界の一流選手達をそれを分かち合うのだ。そこで学べることは実に大きいものがあろう。それは日本チームに戻った時百%、即役立つものだろう。それでいいのだ。
日本チームに戻った時、彼らはそこに集結した他のプロフェッショナルと極端に言えば言葉を交わす必要もないくらい、チームの勝利のためにそれぞれの役割をどう分担すればいいかが分かる。分かっているはずだ。
監督にあれこれ言われるまでのないことなのだ。本田が自立と言ったのはそういう意味なのだ。監督は細かい技術的なことなど言わないのだろう。ザッケローニ監督が、選手たちのコミュニケーションが第一だと言ったのはそういう意味に違いない。
そういうプロフェショナルな選手を育てたのは、まず第一に日本国内にサッカーという自由競争市場があったからだ。一部二部という広範囲の大市場が存在する。その中で生き残ることがまず大変である。そしてその中で育ったエリートは今度は世界市場で求められる。そこに請われ、飛び込んだ世界で学ぶことの大きさ、意味は実に大きい。その中で今度はそれこそ世界中から集まったエリート達との競争に揉まれるのだ。そこで勝ち残れないようでは、到底日本チームに入れるわけがないのだ。
こんなすごい仕組みというか、流れができている国は他にどこがあるのだろうか。
話は突然変わるが、今安倍政権が進めようとしている成長戦略の基本的理念、まずどんな分野であれ
国内での規制緩和を徹底的に進め、国内の競争を活発にする。そしてその産業分野、学術分野のグローバル化を進める。人材育成のために、外国から優秀な人材を集め、外国人の雇用を促進する。国内からは海外への留学や海外での就職を推進する。
TPPへの参加、推進もそのための一つの具体策だ。さまざまな分野で、グローバルに通用する人材を育成することこそが、全体の経済成長戦略のためにもっとも大切なであるという考えは極めて正しいと思うのである。
サッカーなどという実は体力的に劣る、日本人に不向きだと思われるスポーツが今や日本ではメジャーなものになりつつあるということ、しかもそれが世界にも通用するようになりつつある。別にそれはサッカーに限らないが、そうした事例は他にもいくつも挙げることができる。
話はすこし飛躍したかもしれないが、ポイントは日本のサッカーチームが世界に先駆けて一番乗りを果たしたその背景と意味、我々はそれから何を学べるかについてもう少し、敷衍的に考えてみたいと思う。
今朝の主題、「世界に通用する個性の育成と自立の促進」、これが日本がこれから激動の世界の中で一流国として生き残っていくためのキーワードなのだ。
tad
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