「勝海舟の巧みな交渉で、江戸を戦火から守り、旧幕府の危機を救ったとされる江戸城無血開城。しかし勝には、直前まで西郷隆盛率いる新政府軍と徹底的に戦う選択肢もあった! しかも、圧倒的な海軍力を誇る旧幕府軍が勝利していた可能性も! では、なぜ講和が実現した? テレビ初公開のびょうぶから見えてきた勝の深い苦悩とは? さらに会津の悲劇との関わりは? 選択という切り口で、英雄の心の中に迫る新機軸の歴史番組」NHK
昨夜8時NHKBS、英雄たちの選択「勝海舟の秘策 江戸城無血開城への道」を見た。面白かった。歴史学者、社会評論家、脳科学者などがさまざまな観点から二人の主役、人間勝海舟、西郷隆盛の心理、思想を分析、この二人が成し遂げた「江戸城無血開城」という歴史に残る「快挙」の奇跡、軌跡を分析して見せていた。それぞれの分析については、「なるほどそうか、そうに違いない」と思うこともあったが、「勝海舟にせよ、西郷隆盛にせよ、そういう心理を持ち思想の持主でありそういう類まれなる性格だからだからそういう結論を出した」という側面は否定しないが、実は話はもっと簡単なこと、要するにもっと二人の実利主義、現実重視思考のゆえだと思うのである。
そういう決断ができるのはもちろんそれぞれの思想、信条によるところもあろうが、なにしろ実際に江戸の町を戦火で廃墟にしてしまうこと、戦争をやれば何十万という互いの兵士及び民間の人たちの死をもたらす結果になることは明白で、それを避けようという一事であったに違いない。
この二人の交渉のやりとり、今やっている、「八重の桜」を含めて、「勝海舟」「篤姫」など過去の大河ドラマにも出てくる。その交渉の動機、その内容にかなりの違いがあるようだ。どれがどの部分が史実で、どれが脚色なのかよくわからない。が、要するにあの二人、それをすることで場合によっては勝海舟の場合、味方に暗殺される可能性があったし、西郷隆盛の場合官軍リーダの立場を失いかねない情勢であったのだ。そんな中であの決断をしたということがすべてであったのだ。
彼らものそのことについては悩みぬいたが、要するにそれぞれの現実的に見てそれぞれ立場の利害を守り、そして日本という国家とその民衆のために一番いいだろうという結論だったことには変わりがなかった。その思想信条がどうだったからどうこうでなく、まさに現実に即した判断であったのだろう。
西郷隆盛も、間違いなく徳川幕府、その最高権力者であった徳川慶喜の首は絶対取らなければならないと思っていた。それがころりとその考えを変えたのは当時の薩摩の後ろ盾イギリスの公使から、恭順の意思を表明しているものを撃つ、殺すというのは、国際法に違反すると言われたからだ。西郷隆盛はまさにそれにはそれに意表を突かれたのだ。つまり、幕府との戦争で、それを理由に彼らの後盾になるイギリスから見はなされることを恐れたということだろう。この説明番組でなされていた。なるほど、なるほどだ。
西郷隆盛はそれで江戸無血開城を認める絶好の口実を得たのだ。勝海舟も当然この国際法なるものを存在を知っており、それを使い、西郷隆盛に官軍を説得するための理論武装を示唆したに違いないのだ。横浜で生糸の貿易を進めるイギリスはその国益上江戸の町、横浜を火の海にするわけには行かなかった。彼らの権益を守るためには、内戦勃発は避けたかったのだ。
かくして、幕府、官軍そして諸外国は、それでそれぞれの国、藩の利害が一致させたのだ。かくして江戸城無血開城、結果的にはそれがその後の明治維新、日本国の発展隆盛につながっていくことになる。
今から見るとそれが必然のことのように喧伝される側面もある。実際にはむしろそれは偶発的なことによることが多い。もうほんの一歩でも間違うと、全面戦争に突入だったのだ。そういう意味では日本という国、本当にラッキーだったのだ。もちろんそこに勝海舟と西郷隆盛という人材がそこに存在したことがラッキーだっとも言える。
たまりにたまったエネルギー発散に使われたのが会津征伐であったのだ。今やっている「ハ重の桜」の中でもそのことがいやというほど出てくる。正直ものはバカを見る。会津はその典型であったのだ。こと会津のこととなると西郷隆盛も勝海舟も実に冷淡なものである。
そんな歴史的背景の下、「八重の桜」の中に登場する主人公、八重にとってドラマ前半でもいいところは殆どない。今週はいよいよ会津致命的敗戦、八重の号泣の場面を見せられるようだ。しかしその中で生き残ったハ重の本当の価値ある人生がこれから始まるのだ。でないとあまりにも切ない。私はそちらの話の方に期待している。
それもこれもそれは八重の故郷、会津の悲惨なある意味、人知及ばぬ歴史があったからだ。それが藩主松平容保の責任だと断定するほど歴史というものの進行、組み合わせは単純ではない。偶然と言えば、偶発の繰り返しなのである。
このNHKの「英雄たちの選択」、次回の主人公は天才数学者関孝和らしい。こちらは会津のような悲惨な悲劇がまつわる話でなくもっと夢とロマンに満ちた話になりそうで楽しみにしているところである。
tad
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