安倍総理大臣は13日午前、昭恵夫人と共に「日本の棚田百選」にも選ばれている、山口県長門市の油谷地区にある棚田を視察しました。そして安倍総理大臣は、地元の棚田保存会のメンバーや長門市の大西市長などから、日本海に面した傾斜地にある棚田を保存する取り組みについて説明を受けました。この中で大西市長は「農家の高齢化が進んでいるが、農薬を使わない米づくりに取り組みながら、棚田の保存を進めている」と述べました。
これに対し安倍総理大臣は「農業を守るためには、さまざまな仕掛けをし、付加価値を付けていく必要がある」と述べ、棚田のような日本の歴史的な景観を守るためにも、農業政策に力を入れていく考えを強調しました。」NHK
昨日夕刻のNHKTVニュースだ。黙って見ているとどうということない内容である。しかしその最大のポイントは首相が「棚田のような日本の歴史的な景観を守るためにも、農業政策に力を入れる。農業を守るためにはさまざまな仕掛けをし、付加価値をつけていく必要がある。」と述べたくだりであろう。
このニュースはそれで終わっている。首相の夏休み中のことだ。地元の山口に帰っての一時、地元長門市の市長から頼まれて、その美しい棚田の景観の宣伝に一役買ったのだろう。それで「棚田のような日本の歴史的な景観を守るためにも、農業政策に力を入れる。農業を守るためにはさまざまな仕掛けをし、付加価値をつけていく必要がある」となにげなく報道記者に述べだけのことだろう。それはそれでいい。
ただこれから問題になってくるのはまさにこの「日本の農業を守るためにはさまざまな仕掛けをし、付加価値をつけていく必要がある」ということの意味内容である。
首相夏休み後本格化する大きな政治課題は実は二つあるようだ。一つは言うまでもなく消費税増税にゴーサインを出すか、それとも今回は見送るのかだ。どちらとも分からない。今のところその可能性半々のようにも見えるし、いややはり、六分、四分で増税決定となるような気もする。借金が1000兆に達したというニュースもあって、ここはやはり国家としての国際的な信用を得るためにも、やはり増税路線を取るべき、仮にそれが景気の悪化につながったとしてもだ。そのこと自体はすでに世論の承認を得ていることだということもある。増税を決めたところで過去の内閣のようにそれで、政権交代に追い込まれるということもない。今がそのチャンスだという見方は当然ありうる。
まあ、増税やむなしということなりそうだ。たしかにそれ自体大きな政治的判断だが実は今の安倍政権にはそれよりももっと大きな政治的判断が待っているのだ。
それは例のTPP参加交渉である。安倍首相がTPP交渉参加を表明した時、コメを含めた農業を聖域として絶対に守るとことが前提だとしていた。しかし実際の交渉に参加してみると、実はやはり当初の想像以上に他の参加国より農産物貿易の自由化が求められているという現実であったに違いない。
それを今更、日本の主張が認められなければ、参加交渉から脱けだすと息巻いてみても、一旦交渉に加わった以上、それはそう簡単ではない。いや、今更そうすべきでないことも当然だ。当初の想定より日本は相当厳しい自由化の現実に直面しているのではないか。日本の超保守的農業団体はそれが分かっているからこそ、TPP絶対反対の共産党にすらすがろうとするところがあるのだろう。
交渉の結果がどうなろうと、日本に相当不利な条件が押し付けられようと、私は安倍政権がTPP参加を表明したこと自体は支持したい思いである。その不利な条件もあえて受けいれる覚悟も必要なのではないかと思う。
つまりそれは結局は日本の農業を守るためだ。今の農業そのものではない。国際的に競争力のある農業にするためだ。ための改革、改革を進めるためには、むしろ思い切って農産物の貿易の自由化を進めることが必要だろうという政権周辺の大方の意見に賛成である。
安倍首相が日本の農業を守るためにはさまざまな仕掛けをし、付加価値をつけていく必要があると言ったことの中身はそのことなのだろうと思う。しかしこれからはそんな抽象的な言い方でなく、そのためのトータルの戦略、戦術、政策的アクションを具体的に述べ、実施していく必要がある。いよいよその時期が来たようだ。
まだその内容、首相自身、関係省庁の担当大臣あたりからもなんの説明もないが、TPP交渉がこれから煮詰まっていく中、それに備えて、これからのの日本の農業のあり方、戦略具体論がこれからあれこれ出てくるだろうし、それを期待するということだ。
その具体的中身について今詳しく述べる内容も時間も持ち合わせないが、そのキーワードが冒頭のタイトル「棚田とスマートアグリ」である。スマートアグリとは何かについて
て、この冒頭NHKのニュースと並んでこのニュースの関連リンク記事をして挙げられている内容http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3349.htmlをお読みいただければいいと思う。
そこには日本の九州ほどの面積のオランダという国が、実はアメリカにつぐ世界第二位の輸出国になった内容と経緯が説明されている。それは農業IT化というテーマである。日本の農業もそれに習うことで、日本の農業もそれによって大変革を遂げることができるだろうということである。
補助金と常軌を逸した高額の関税で日本の農業を守るという発想はもはや時代遅れであることなどいうまでもないことだ。実はこの農業のIT化論、第六次産業化などの議論などすでに盛んになされていることで、実際にそれにとり組むベンチャービジネスもいくつか登場しきている。多くの大手企業もそのビジネスチャンスに目を向けている。
TPP参加反対、日本の伝統農業の死守などというスプレヒコールではもはや日本も日本の農業も生き残れないことなど明白である。日本はなだたるIT先進国なのだ。農産物とて一つのモノにすぎない。日本のIT技術工業技術が、農産物作りにどれだけ役立つか、そのノウハウを結集することが日本の農業、日本という国家の生き残りが掛かっているのだ。
安倍首相そのような話を、夏休みのあとにされるおつもりなのだろう。そのことを是非期待したい。
ついでに言っておく。あの美しい棚田を守るためにも、日本の農業大改革が必要であることはその通りだが、オランダと違って日本は世界に冠たる自然災害国であることをお忘れなきよう。
tad
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