また、6月に選任された女性理事、外部理事ら6人を除く上村体制の理事23人、監事3人の全員も辞任し、新たな理事・監事も選任。副会長には1984年ロサンゼルス五輪金メダリストの山下泰裕・東海大副学長(56)、専務理事には元大阪府警本部長の近石康宏・トヨタ自動車顧問(64)が就き、柔道界再建に向けた新体制がスタートした。任期は、上村体制の残任期間である来年6月まで。
上村体制で辞任した理事のうち、山下副会長、川口孝夫・国際柔道連盟審判委員(63)、細川伸二・全柔連国際委員長(53)ら7人が再任され、早稲田大の友添秀則教授(57)ら14人が新理事に。6月に就任した谷亮子参院議員(37)、橋本聖子・日本スケート連盟会長(48)ら留任の6人を加え、新体制での理事は計27人となった。監事は再任1人を含む3人で、全日本女子の暴力問題で選手15人の告発を支えた山口香・筑波大准教授(48)が新たに選ばれた。
東大柔道部出身で、全日本実業柔道連盟の会長も務める宗岡会長は記者会見で、「全柔連のガバナンス(組織の統治)や不祥事の問題をきっちり立て直して軌道に乗せ、一日も早く国民の信頼を取り戻したい」と抱負を語った。さらに「軌道に乗ったと確認できたら、職を辞して若い有為な人に任せたい」とも述べ、改革が順調に進めば1期限りで退任する可能性も示唆した。
辞任した上村前会長は臨時評議員会で、一連の問題について謝罪しながらも、会長を務めた4年余を振り返り「自分としては本当にいい仕事ができたかなと思います」と述べた。【石井朗生】」 毎日新聞
新聞、TVなどマスコミ、この柔道界の一連の騒動を連日あれこれ報じているが、どうも一番肝心なことには一向に触れないようだ。意図的にそうしているのか、そもそもそのような問題意識がないのかだ。多分後者なのだろう。
ああでもない、こうでもないとさんざんもめた挙句、この全柔連問題どうやら上記記事のような形で決着するようだ。なにしろ宗岡新会長は柔道界内部のものでなく、外部の著名一流企業の経営者だ。組織経営のプロ中のプロだ。それに副会長はあのロンドン五輪金メダリスト、国民栄誉賞の山下泰裕氏である。そして、全柔連という組織の監査、監事にはあの女三四郎、山口香氏が就任、新理事にやはり金メダリストの谷亮子氏、スケート連盟会長の橋本聖子氏など、まさにオールキャストを印象づける人事だ。本当にこんどこそはなにかやってくれそうな雰囲気ではある。しかし私自身はこれにかなりの違和感を抱いている。
新会長の宗岡氏が、インタービューで語っていた。「私の仕事は、全柔連の組織作りをオープンにやり、その説明責任を果たすこと」だそうだ。一見ごもっともなことを語っておられるようだが、外部の一般国民から見ると、どうも全柔連の組織そのものがかなり肥大化していると感じる。まずその簡素化について言及することが、経営のプロのおっしゃるべきことだと思うのだが、どうもその雰囲気に欠ける。
そもそもこの全柔連には、意思決定機関として、企業でいうならば取締役会に匹敵する理事会なるものがある。その理事の数20数名にも達する。それについてそれぞれどんな報酬を受け取っているのかについて詳細知らされたことがない。
さらに理事会に加えてそれがどんな役割を果たすのかよくわからないが、相当数の評議員からなる評議委員会があって、新会長の正岡氏がその委員長を務めていたそうだ。その正岡氏、今回その評議委員長を辞するに当って、「いい仕事ができた」とコメントしておられるのだ。「ええっ? 何ですか、どんないい仕事ができたとおっしゃるの?」と聞きたたくなる。
評議委員会とはおそらく理事会、執行部の仕事を補佐したり、アドバイザー的な役割を果たすための評議をする場だと想像する。一体執行部のあの数々のとんでもない不始末を横目に、一体どんないい仕事ができたとおっしゃるのか、と皮肉の一つも言いたくなる。
この全柔連、いわゆる公益財団法人である。民主党政権時代、いわゆる事業仕分けなるものがあって、この国には、ものすごい数の公益財団法人なるものがあり、税金のムダ使いが批判されていた。当時そうした仕分け事業が始まったこと自体、大変いいことだと思っていたのに、その後の民主党政権の没落が、あってそんな問題、どこかに吹き飛んでしまった。
ところがこの全柔連、ご承知のように、自民党政権になってから、管轄の文部科学省からその経営のずさんさを指摘され、公益財団法人解消の可能性をつきつけられたのだ。目に余る助成金の不正受給など不祥事が発覚したからである。その一事をもってして、全柔連という組織のいい加減さがわかろうというものだ。
そんな上状況を受けての今回の新人事なのだ。組織をオープンにしますとか、説明責任を果たします程度でその改革の内容、程度が理解されるわけがない。「組織改革のために
はこの公益法人としての原点に戻ります」位の言葉が欲しいものだ。
原点に戻るとは、この組織、そもそも一体何の目的で、何のために存在する組織かということを明確にしてもらいたい。いや改めてそれがどう書かれているか調べてみてもいいのだが、どうせ抽象的な美辞麗句で埋め尽くされた言葉で表現されているにすぎないだろう。
実際それがどう表現されているかは別にして、この組織分かりやす云えば、要するにオリンピックや国際大会で、メダルを沢山取るためにある。そうした競技会でメダルを取れる選手を育成のための組織なのである。
だからこそあの代表監督による暴力沙汰が起こった。それは今に始まったことでない。山下、山口、谷各氏とも十分経験していることであり、知っていることなのだ。ロンドンオリンピックで金メダル3つ4つ取っていれば、そんなこと表面に出てくることはなかった。暴力があろうが、無かろうが実力のある選手がそろっていたかどうかだけの問題だ。
私は何も暴力指導を肯定しているわけでない。何を今更言っているか、と言いたいだけだ。
それについて今度新しくそれぞれの任につく山下氏、山口氏などは、全柔連の組織がなんのためにあるかということについて、これまでは競技会で成果を上げるばかりがその目的でとなっていたが、広く日本の柔道というものの存在価値、文化的価値を高めることが大切だというニューアンスのことを述べていた。
私自身はその見解を支持したいが、今の時期それが改めて出てくることに違和感を覚えるのである。第一肝心の宗岡新会長はその点どう考えておられるのか、まずそのことをお聞きしたいものだ。組織論の前に、この全柔連の組織は一体何を目指すのか、何を実現達成したいのかという目的、理念をまず明確にすることが大切なのではないか。
いや、極端な話、そんな理念などどうでもいい。とにかくオリンピックで金メダルを一つでも多くとることがこの組織の目的のすべてだと言ってもらってもいいのである。いや、そんな抽象論よりその方がわかりやすい。そのために国民の血税を使って多額の助成金をつぎ込むというのならその方がわかりやすいのだ。それを新会長どのように語るか注目だ。
ただ仮にそれでいいとしてもである。そのための組織として、全柔連にあの大勢の理事や評議委員それに事務方の幹部、職員が本当に必要なのかという議論はもっとあっていい。いずれの公益法人、各種行政法人は、ただその役職につくだけで、高額の報酬を得るような仕組みになっていること、それが税金の無駄使いになっていることはさんざん指摘されてきたことである。全柔連とてその例外ではあるまい。
助成金が本当に選手育成のために使われているのならいい。そうではなく、その組織の周辺に群がる役員、事務職員が甘い汁を吸っているのではないかという疑いがつきまとうのだ。
そう言っては失礼だが、山下氏や山口氏がそうした組織本質論、組織改革論、組織経営論など期待はしないし、できないだろう。
オリンピック選手を育てるにはどうしたらいいかという事については、彼らこそ、自らの経験からしても、ひょっとすると全柔連なるものの存在意義、その必要性などあまり認めていないかもしれないのだ。強い選手を沢山輩出するためには、むしろそれぞれ地方のクラブ、学校、警察等々に、数多く優秀な指導者が存在することこそが一番大切であることはご存知なのではないか。
そういうことを含めて、宗岡新会長、今あらゆる全柔連にまつわる問題を原点に戻すべきだ。再度言うが、そもそも全柔連とは一体何なのか、どんな目的や理念を持っているのか、持つべきなのか、その目的を実現するためにその組織はどうあるべきか、すべてについて原点に戻り、まさに抜本的改革を始めて頂きたいのである。
文部科学省が全柔連の公益財団法人指定解除について言及する。これは単なる脅しであってはならない。そのことの重大な意味を会長を初め、全柔連に関わる理事、評議委員、事務関係者すべて真剣に考えてもらいたいものである。
tad
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公益財団法人とは:zaidanhoujin
全日本柔道連盟:wikipedia
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