どちらの言い分に賛成か反対か、どちらの言い分が論理的に正しいかなど考えることなどあまりしない。多くの場合、総じて自分の意見でなく、マスコミ、新聞、TVが書いていること、報じていることを、そのまま丸呑みにする傾向が強い。報道の雰囲気に大きく支配され、どちらに賛成か反対か、ムードで決めてしまう。決まってしまう。
昨日の朝日新聞、この問題一面トップでは取り上げていないが、一面で「麻生ナチス発言」「官邸主導で幕引き急ぐ」と主要記事にしている。そして二面ではそのほぼ全面を使い「政権麻生ショック」、「国際社会を敵に回す」「なぜナチスを例えに」米の人権団体、「信じられないほどの誤り」ドイツ専門家などの記事で埋め尽くされている。タイトルを見ればその中身は分かる。
こうした一連の記事を読んでいると、麻生さん、またまたとんでもない重大失言をしてしまったととられてもしかたない。しかもそれは国内のことだけならともかく、あのナチスのやり口に学べというようなとんでもないことを言ったとすれば、それだけで世界中を敵に回してしまったかのごとく報道されてしまってもやむをえまい。
TVのニュースショーなどで、数多いコメンテーターたちもそうした雰囲気、流れの中で顔をしかめながら、「麻生さん、困ったことを言ってくれたものです」的な発言になるのだ。多くの視聴者もこれに同調、「いやはや、麻生さん相変わらずだな」という反応なのだ。麻生さんが、本当の所一体何をおっしゃろうとしたのか、その真意、中身、その論理のことなどは考えてもみない。
かく言う私自身もこうした一連のマスコミの報道に流され、麻生さんまたまた困ったことを言ってくれたものだ、というのがその第一印象だった。さてそれで安倍さんどうするのか、参院選で大勝利を収めたばかりだし、内閣支持率も高いから、麻生更迭などありえない。まあせいぜい麻生さんに、謝罪、釈明させ、朝日記事にあるように幕引きにかかるのだろうと想像した。
案の定、麻生さんあの発言は適切ではなかったと早々と撤回してしまった。うーん、これで、そんなことで一件落着していいものかと思ったわけだ。
今朝、ネットニュースをチェックするうち非常に参考になったのが、評論家青山繁晴氏のYouTubeでの発言である。この発言を聞いて、私はなるほど、そうかと改めて一連の騒ぎ、麻生発言の真意を見直した。
その麻生氏、たしかに問題とされたように、ナチスに習って、国民も知らぬ間に憲法を変えてしまえと言ったわけでもなさそうだ。さらにましてやナチスの存在自体を容認するようなことを言ったわけでもなさそうだ。これは明白。一番の真意は、憲法改正のことは、そうした喧騒の中で行われるのでなく、じっくりと静かに国民の理解を得ながら手順を踏んで行われるべきだというところに主眼があったようだ。青山氏の解説は、どちらかというとそういう文脈の中での発言だったと私にも思えた。
にもかかわらずその青山氏、政府が、麻生発言を撤回させてしまったこと自体は大間違いだと指摘されていた。私もそう思う。そういう内容の発言なら、むしろそのことをまず正々堂々国民に向かい、国際社会に向かい説明したらいいのだ。マスコミもマスコミなら
政府も政府である。
その安倍首相、どうしてこの麻生氏がその発言の中身、趣旨、意味を国民に対しきちんと説明しないまま、撤回するのかだ。その趣旨をまずは麻生氏自身がその内容・趣旨を説明することだ。それが青山氏が指摘するような内容なら一体なんの問題があるというのか。どうしてそれを論理的に説明しないのか、出来ないのか。どうして安倍首相はまずはそれをするよう麻生副総理に求めないのかである。
それとも麻生副総理のあの発言の真意はまさにナチスの存在そのものの容認発言であったのか。もしそうだとすれば、それこそ大変なこと、安倍内閣総辞職となってもおかしくない。
日本のマスコミ相変わらず、互いになあなあ的である。本件に関し、朝日の論調が仮に間違っているのだとしたらどうして産経や読売が明確に麻生氏擁護の論調を示さないのか。世の中どんなことでも賛否両論があるはず、あるべきなのだ。麻生発言の政治的意図がどこにあったか、それは分からない。が、少なくとも氏の発言の真意は論理的に突き止められるはずだ。どうして日本を代表するマスコミがそれをもっと論理的にできないのだろうか。
発言の撤回などというのはまさに姑息な手段、誤解を生むような発言があったことについて謝罪は必要だ。しかし、その真意が別のところにあったのなら、どうしてそのことを正々堂々国内に向かって、国際社会に向かって説明しないのか。
国会が始まり、野党がこの問題を取り上げるよう要求したのに対し、与党はこれを一蹴したようだ。どうしてか、なにもそれが臭いことでないのなら、どうして審議にも応ぜず蓋をしてしまうのか。
安倍首相、だからこを、参議院のねじれなど解消したかったのだと思っているのだろう。情けない話である。
tad
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