2013年8月6日火曜日

集団的自衛権、首相諮問機関行使容認提言へ

「安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は集団的自衛権の行使容認を提言する方針を固めた。あわせて軍事行動を含む国連の集団安全保障への参加も認める。いずれも憲法解釈を変更して可能とすることを求める報告書を年内にもまとめる。

安保法制懇の座長である柳井俊二元駐米大使は4日のNHK番組で「今までの政府見解は狭すぎて、憲法が禁止していないことまで自制している」と指摘。「集団的自衛権の行使は憲法上許されている。国連の集団安全保障への参加は日本の責務だ」と述べた。

安保法制懇は2008年の報告書でも同様の見解を示しており、柳井氏は「年内にも報告書を出したい」と語った。また、小野寺五典防衛相は同じ番組で「防衛大綱の前提として政府方針がある」と強調。報告書の提言をもとに決まる政府方針に基づき、年末につくる新防衛大綱に反映されるとの見通しを示した。」朝日新聞  7月5日

昨日の朝日新聞トップ記事だ。朝日は、この最も基本的な国家防衛問題に関わる事についての政府の動きについてトップ記事としてとりあげてはいる。ただこれについては例によって、その事実関係を報じているだけで、この問題に関する安倍政権の動き、方針を支持するのか、しないのか、とりあえず一切言及していない。とりあえずは、いつものように様子見なのである。

まずは世論の動向がどうなのか見極めたいのだろう。別項だが、朝日は最近の報道の中で国民世論の50%は集団的自衛権についてはこれを容認しているという報道をしていたことを記憶している。

その一方で毎日新聞は、今年のはじめ安倍内閣が集団的自衛権行使に積極的に取り組もうとしている姿勢を批判していた。毎日は最近の世論調査でも国民の51%がこれに反対していると報じているところを見ると、毎日は朝日より明確に集団的自衛権行使反対派、否定派なのだろう。その1月23日付の記事でも集団的自衛権行使については「ギブ&テークの幻想」という言葉で容認論を否定しているのだ。この記事少しじっくりお読みいただきたい。その論調少々幼稚というか、論理的でない。その一節を引用しておく。

【「容認すべし」派が特に強調するのが「米国が攻撃されるのを同盟国の日本が座視していていいのか」という議論だ。自民党の石破茂幹事長は「米国に向けて発射されたミサイルを日本が落とさなかったら、日米同盟はどうなるのか」としばしば言及している。

だが、元外務省国際情報局長の孫崎享(うける)さんは「日本が北朝鮮のミサイルを迎撃するのは不可能」と指摘する。「仮に北朝鮮が米国めがけて大陸間弾道ミサイルを撃てば、高度1000キロ以上の上空を飛びます。自衛隊に配備されているミサイルは高度100?200キロ程度までしか届かない。そもそも米国に向かうミサイルは北極を通りますから、日本上空を飛びません」】

何を言いたいのかさっぱりわからない。石破幹事長の言い分自体現実的でないと言いたいのだろうが、現実北朝鮮がそのような挑発行為が現実に起すと喧伝しているのである。日本がその能力があるかどうかは別にして、そのために全力を尽くすのが同盟関係というものだという極めて当たり前のことを言っているのだ。

いずれにせよ、この点では殆どの日本マスメディア、基本的には政府の集団的自衛権行使についての動きについては様子見のスタンスなのである。それぞれの社説などで政府が集団的自衛権行使は憲法違反でなく、憲法の範囲内でこれを行使することを正当化することについての賛否を明確にしていないのだ。というのも国民世論はこの問題については真っ二つに割れていると見ているからであろう。それならなおさら、どちらの立場に立つにせよ自らの信念、理念を表明し、国民の理解を深めるようにするがのがメディア本来の役目ではないのか。

その中では、唯一産経新聞が、この問題についての一連の政府の方針を、集団自衛権の積極的行使に慎重な公明党との調整を急ぎ、集団的自衛権行使の正当化を実現させるべきだと6日付けの「主張」の中で述べたいた。私は基本的にこの論説に賛同する。

私は長年にわたって行われてきた集団的自衛権論議については、まことに摩訶不思議な日本独特の現象だとずっと思ってきた。その議論の中身を今詳細に論じることをしない。が、例えば、上記のように北朝鮮が日本近海に出動しているメリカ艦隊にミサイル攻撃などしかけた時に、日本の自衛隊がそれにアメリカ軍と共同で反撃に出ることの一体どこが悪いのかという言い分の一体どこが間違っているのかさっぱり分からないのだ。従来から自民党、さらに民主党内にも一部そういう見解の議員は数多くいた。それぞれの政権党の見解については至極当然、常識的な論理だと、ずっと思ってきたのである。

そうした集団自衛権一旦それを認めると、日本がどんどん戦争を仕掛ける、仕掛けられることになりかねないという懸念、疑念のために歯止めを掛ける必要があることについてもそれを否定しない。

日米同盟は根幹的には日米対等の立場で運営されるべきもの、アメリカは敵国からの日本への攻撃から守ってくれるが、その逆はないなどという論理などあろうはずがない。それは国際法がどうの、国連の憲章がどうのという議論を持ち出すまでもないことだ。それが国際法認められているのだから、憲法の解釈もその点にそってなされるべきだという論に、憲法違反論が出てくること自体まさに論理の矛盾なのである。

安倍内閣が長年の亘るこの議論にそろそろ決着を付けなければならないと考えた背景には緊張する日朝関係や中国との尖閣列島問題がからんでいることは明白だ。さらに今日アメリカ側の軍事費予算の削減があって、日本側にこれまで以上に防衛意識の高揚や、日米安保下における軍事費の分担増というニーズがその大きな背景となっていることもむしろ当然のことであろう。

先の参議院選挙ではねじれは解消した。しかし、憲法改正の勢力を確保できなかったということがあって、この際憲法改正の条件が整うまでは待っておれない。安倍内閣、とりあえず、現行憲法の下でも集団的自衛権を行使できるための法令上の条件整備に乗り出したということについても理解はできる。

安倍首相、アジア各首脳の訪問の際、この集団的自衛権行使について、各国首脳にその内容を説明し理解を求めているおうだ。それも必要なこととしても、どうしてまず日本国民に対し、もっと正面から、集団的自衛権のこと、その論理、必要性について説明をしないのかだ。やればいいではないか、やればより多くの国民の理解は得られるはずだ。国民の55%、60%の理解を得、支持を貰えるという状況を作り出すことも不可能ではないと思う。

ことは国家国民の安全に関わること。北朝鮮や中国という仮想敵国状況が厳然と存在する状況である以上、平和ボケした国民の防衛意識を呼び覚ますこと自体が一つ重要な政治の仕事であると私は思う。

そもそも安倍内閣どうして先の選挙でこの防衛問題をもっと明確に争点の一つにしなかったのかである。これかでも遅くない。アジア周辺国の理解もさることながら、そもそもこの国の主権者国民にもっと正々堂々と野党との防衛論議を見せてもらいたいものだ。

tad

関係記事:

集団的自衛権、首相諮問機関行使容認提言へ:asahi
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集団的自衛権:wikipedia 
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