関税完全撤廃が本来のTPPの目的であることはわかっていても、実際に85%という自由化率が示されてみると、ある意味衝撃的だ。さらに朝日の記事は、この報道を次のように締めくくっている。
「日本が示す最大で85%という自由化率は交渉で日本が示す最初のカードにすぎない。こんごもっと引き上げざるを得ず、最終的な自由化率は96%以上になる(外務省幹部)との見方もなる。藤田知也」
やはりそうなんだ、どうやら、たしかに聖域、聖域と騒いでいたコメなど一部農産物を除いて政府はあらゆる品目の関税はゼロとし、ほぼ自由化する腹つもりなのだ。朝日ほかマスコミはそのことを報じているのだが、意外なのは、それについて世論の反発とか反応が殆どないことだ。そうしたことが報道されていないのである。マスコミは淡々とそれを報じ、世論もまたそれを極めて冷静に受け止めているようなのである。
世論が冷静なのか、そもそも無関心なのか、それはよくわからない。が、私はある意味もう少しそのことで衝撃を受けたという反応があってもいいと思うのだ。
マスコミもマスコミで。それを報じた朝日にしても、そうした事実関係を報じるだけで、そうした政府の動き、方針に関して、批判的な社説を掲げるわけでも、その影響について警告的な論説を掲げるわけでもない。いや、それもこれから出てくるのだろうが、TPPの交渉妥結はもうそこまで来ているのだ。ありていに言えば、今更、どうのこうの言っても「覆水盆に返らず」の状況ではないのか。
いや、こんな大事、国家の経済、国民生活に大きな影響をもたらすことがこんなに淡々と決まって行くのだ。あの原発大反対のデモのような起こってもいいようなことである。それが一切ないというのも実に不思議なことである。
いや、この問題に関しては国民が、ことのすべて、その本質的な問題の理解をしているのならいいのである。その長期的、短期的な国民生活への影響を考えた上で、トータルではいいことだ、経済的にも個々の国民生活にとってもプラスが大きいと考えての上での「無関心」なのならいいのである。
もっともこの問題、いろいろいいの悪いの言うが、やってみなければ分からないというのがおそらく誰にとっても本音のところはある。
管理貿易か、自由貿易か、管理経済か、自由競争経済か、と選択を迫られたら、後者がいいとなるに決まっている。いや、それは少なくとも私自身の選択である。TPP参加交渉に賛成か反対かと問われたら、私自身はずっと賛成と答えてきたつもりだ。
しかしそれで実際自由化率96%という数宇に直面した時、ある種の衝撃を受け、本当にそれで大丈夫なのかと、心配する面ももっとあっていいと思うのだ。その点では、日本人という国民、いい意味でも悪い意味でもかなり楽観的かなとづくづく思うのである。
TPP参加交渉、もうここまで来た以上後戻りはできない。96%の自由化、いずれ100%自由化することで、日本の経済がより発展し、あらゆる意味での国民生活の向上が計れるというのがその前提になっているのだ。本当にそれでいいのか、どうか、お互いもっと関心を持つべきではないのか。
ぞういう意味でも、今政府はその中身、それを実現するための戦略、グランドデザインをより具体的に国民に提示すべき時期が来ているのではないか。
tad
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