2010年1月2日土曜日

「ゆりかごから墓場まで」:高福祉高負担国家論

参考記事を含むBLOG記事はこちらです。 

年末鳩山内閣の長期経済成長戦略が発表され、論議を呼んだ。それは例によってマスコミからさんざんたたかれた。中でもひどいのはTVニュースショーのコメンテーターたちのコメント。総じて中身のない、ビジョンに欠け、具体性に乏しいものだとこてんぱん。

私はその内容の良し悪しはともかく、こういう形で長期の経済成長戦略が時の政権によって提示されたこと自体に非常に意味があり、それは評価されてしかるべきという意見を31日のBLOGで書いた。よかろうと悪かろうとともかくこういう議論がさかんにされること自体に非常に大きな意味があることは間違いない。

ただろくな批判をしないマスコミ評論家の中で、要するにこの長期経済成長戦略論議で分かりやすいのは、国民に日本は一体どういうタイプの福祉国家像をめざすのかを、明確にすることだという趣旨の発言については、私はその通りだと思った。麻生前総理はそれについては、この国は中福祉、中負担を目指すのだといっていた。現状程度からもう少し上のレベルの福祉国家をめざすなら、消費税を10%から15%位まで引き上げる必要があるという、大雑把だがそういう趣旨の説明であったと思う。それについては、それはその通りだろうと思っていた。

一方民主党が党是として言っているのはあきらかに、高福祉国家なのである。子供手当てのことといい、貧困層への手厚い配慮といい、医療、介護、年金サービスのさらなる充実といい、そのめざしているものは、「ゆりかごから墓場まで」の北欧型の高福祉国家のようなのだ。、そうであるのなら、それは結果として当然国民にその負担、より高い負担を、例えば消費税20%、25%といった、スエーデン、フインランドのような財源高負担国家をめざすことになるのは必然である。

来年度の予算については、子育て支援の財源を捻出するにも四苦八苦、なんとかごまかしたが、来年以降の財源捻出に苦労するのは目に見えている。党内でもそろそろ仙石氏のように消費税アップの検討を始めるべきだという声が出てきたのは当然なのである。ところが肝心の鳩山、菅の両氏はこれについては将来の議論はあってもまだ当面はないというスタンスで通している。それはあきらかに間違いではないか。

消費税アップ論の前に、まずは無駄使いを徹底的にやってからだという主張は正しいが、長期経済成長戦略といっても経済成長率はせいぜい2%、3%という最低限のものなのである。そんなもので、果たして、理想として掲げる高福祉社会の実現など可能なんだろうか。そのために税として国民にどれくらいの負担を求めるのかを明確にすることこそが、国民の信頼を得る絶対必要条件であると思われる。

繰り返しになるが、あの程度の経済成長率を維持しながら、この国の福祉レベルをどの程度にもっていくのかという論議があるべきなのだ。2.3%の成長で果たして、民主党が理想としてもっている高福祉社会が維持できるのかどうかという論議である。もし北欧型の高福祉国家をめざしているのなら、結果としてそれが高負担、すなわち消費税20%,25%すら必要になってくるという議論が出てきてもおかしくない。

この点に関して世論調査では、どうやら国民はその高福祉、高負担という北欧型モデルを希求しているようなのだ。いや、少なくともそれについての国民の意識調査をまずやってみる必要性があるのではないだろうか。

長期経済成長戦略などというからわからないのだ。現民主党政権が今まずやるべきことは、国民が長期的には高福祉高負担の国家像を希求しているとした場合経済成長戦略に加えて、そうした高福祉国家像にまつわる税という国民の負担、高負担をどういう形で国民に求めるのかという説明を堂々と国民にすることである。

それを夏の参議院選挙に負けないようにするために、当面消費税増税論は避けておこうなどというちゃちな考えはやめるべきだ。鳩山、菅両氏がそれを言えないのなら、幹事長の小沢氏が、かって国民福祉税7%をいい細川政権を崩壊させたトラウマにめげず自らの政治生命を掛け、政府に対し明確な増税論議スタートを主張することである。それはまだ先のことだが、必要不可欠なプロセスではないのか。そのこと自体、選挙にも有利に働くことはあっても必ずしも不利に働くことはないと私は信じている。

tad

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