2009年12月30日水曜日

沖縄密約と普天間問題

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是非コメントください。


普天間問題でふらふらしているのは鳩山首相だけ、あちらこちらにいい顔をしようとするからダメなのだ。政権を取ったとたん、普天間問題については県外移設を時間を掛けて探ると明言し、アメリカにもその旨を伝えれば、もちろん反発はあっても今のような不信感を受けることはなかった。それをオバマ大統領に、すぐに従来の日米合意案で決着するようなことを言っておいて、それを翻すようなことをしたことが不信を買ったのだ。当然だ。そう言った以上さっさと辺野古移転の合意を進めるべきであったのだ。

おそらく鳩山首相や岡田外相は一旦は辺野古移転で決着という線で行こうと決めたようだ。が、それを小沢氏が否定した。小沢氏は三党連立路線維持が政権維持のため、来年度参議院選挙勝利のためにも必要と考えたのだろう。鳩山内閣支持率の下落が続いているが、年が明け通常国会が始まり、来年度予算が成立すれば、民主党のマニフェストのいくつかが、実施に移され、国民は政権が変わったことで生活が変わったという実感を得る場面が出てくる。その他のマニフェストに関しても通常国会の中で審議され、その実行のための法律もできていくという形になってくる。そのためにも三党連立の枠組みは必須であり、またそういう展開になれば、参議院選挙での民主党過半数獲得の実現性は高くなるのだ。
参議院で単独過半数を得れば、民主党政権が安定し、後はさらなる政策実現のための政権運営ができ、長期安定政権への道筋ができるという計算なのだろう。

小沢氏が辺野古への移転に明確に反対しているのはただ連立先の社民党への配慮だけではないはずだ。これについては国民新党の亀井氏の思惑とも一致しているようだが、要するに元々小沢氏の持論である、この国を、外交・防衛における過大な対米依存体質から脱却させ、普通の国にするという理念がある。民主党政権下ではそうした外交姿勢への変換は選挙前から訴えられてきたものであり、鳩山首相は普天間問題に関しても、その姿勢を貫くべきだったのだ。小沢氏はむしろ鳩山首相のぶれを元に戻しただけのことではなかったのか。

国内でその問題に関する議論はいずれにせよ起こるものなのだ。普天間問題に関しての国内世論はおそらく真っ二つと思われる。内閣支持率の下落は、普天間問題がどうなるかというより、鳩山首相のぶれに対する不信感であったと思われる。対等な日米同盟関係の再構築という問題に関しては、おそらく過半数の国民の支持を得られると思われるのである。

そしてタイミングよく出てきたのがこの沖縄返還や、核持込に関する日米密約の存在であった。その秘密文書が佐藤元首相の自宅に保存されていたなどとんでもない話なのだ。

こうした密約の存在を歴代自民党政権は頭から否定してきたのだが、それがうそであったことが判明したのだ。沖縄返還に関して日本がアメリカに支払った多額のカネのことなど明らかにそれ自体不平等条約であり、今の日米同盟の不平等さを象徴する典型的な例ではないのか。

アメリカはそれは国家間で取り決めた外交上の案件の一つ、とばかり自ら公表してなんら悪びれるところがない。それはそうである。しかし問題は日本側だ。そんなものあるわけがないと歴代自民党は否定してきたのだ。いや、国民を欺いてきたのである。少なくともそれは当時の日米の力関係ではやむをえないことであったと説明すべきであろう。

現民主党政権もこの密約の存在、何十年も昔のことを今更引き出してうんぬんすることはない。第一言ってもせんないこと。しかし仮に自民党の連中が民主党政権の外交防衛政策の基本的スタンスに関する批判だの、それをぶれだの、アメリカの不信のことを言うなら、この密約の問題を持ち出し、それこそ「あんたらに言われたくない」とやればいい。アメリカのいいなりになり、こんな不平等な関係を築いてきたのは一体誰だとやってやればいいのだ。

日米同盟の重要性など共産党以外、社民党を含めて誰も否定するものではないだろう。しかしこの普天間問題で大いに紛糾することは、今後のより正常なまともな日米関係の構築という意味ではいずれ一度は経なければならぬ道ではなかったか。29日の朝日社説にあるように結果はともかく普天間県外移設をおおいに本気で探ってみたらいいのである。

tad

2009年12月28日月曜日

再び観光立国論

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昨朝はいつものように7時台のフジテレビの新報道2001、9時のNHKの政治座談会、10時のテレビ朝日のサンデープロジェクトなど見ていた。サンデープロジェクトは田原総一郎の司会で、与党側菅副首相、亀井大臣、福島大臣、野党から谷垣、山口、志位など各党党首のオールキャストが売りだった。一番見ごたえのありそうなものであったが、例によって田原総一郎の手法で野党側を挑発、取上げたテーマが首相の献金問題、普天間問題、天皇会見問題など、もう与野党の言うことはわかり切った内容の繰り返し、菅副首相一人が、少々しらけた表情で、守備に大わらわというスタイルであった。あの田原それが視聴者には一番受けるとでも思っているのであろう。もう少々鼻についてきた。

来年度予算案をめぐっての論議中心ならともかく、献金問題だ、天皇会見問題など最初から与野党のいうことがわかっているようなこと。もうそんあ議論は聞き飽きた。第一そんな話をいくらしても今の経済状況を改善するためになんの答えにもならない

その点ではフジテレビの新報道2001の方はサンデープロジェクトのようなテーマもなかったわけではないが、これからの日本が国家として育成すべき観光産業のことを取上げその担当大臣である前原国土交通相が出演し、さまざま興味ある話題が展開していた。前原氏は今後の国家プロジェクトとしての観光産業育成の必要性、またそのための戦略を語っていた。コメンテーターとしてその道の研究者、専門家も出演しさまざまな観点からこの問題に迫っていたのは非常に興味深いものがあった。

ちょっとこの問題を調べてみようとYahooやGoogleで検索してみたのだが、
Googleのデスクトップ検索に引っかかったのだろう、私自身が丁度一年前ほど前に書いた「観光立国日本」というBLOG記事が出てきたので驚いた。いや、正直言ってその記事のことはすっかり忘れていたのだ。が、潜在意識としてこの観光立国日本というテーマの大切さが、自分の中にあったことには満足を覚えたのである。

そうなのだ。去年の1月と言えば、まだ自民党政権の時代、その政権の中で観光産業育成重要性が認識され、観光庁なるものが設立されたが、殆ど話題にならなかった。その後の選挙戦の中でも民主党の政権公約の中にもそのことは殆ど取上げられることもなく、推移してきたのだった。それがこのフジTVの番組の中では、低経済成長、財政困難、地域振興、環境問題などの条件下、そうした悪条件、必要要件を克服し、しかもこれまで以上の経済成長達成のために、観光産業の振興が如何に大切かの論議がなされていたのだ。それは非常に意味のあることだ。しかも前原大臣が中心になって国家戦略室とも連携をとりながらその推進のためのさまざまなプロジェクトを検討中であるという話を聞いてなるほど、なるほどと思ったわけである。

年末になると日本から多くの観光客が外国に出かけるが、日本に訪れる観光客の少ないことに今更ながら驚く。改めて見るまでもないが、勧告客数に関してはフランス、イタリヤ、アメリカなどにくらべると日本はずっと下位なのだ。

なぜ日本がこれから観光立国をめざさなければならないか、それは観光庁の資料、観光立国推進基本法などにも書いてあるが、この番組で聞いたこと、各種資料、観光統計などを参考にして私自身のまとめを書いておきたい。

なぜ観光大国をめざすか。

・観光資源の投資は従来の道路、ダム、ハコもの建設の公共事業に比べてそれがもたらす 経済効果は極めて高い。
・一人の外国からの観光客がもらたす経済効果は自動車一台の輸出に匹敵する。(番組の 中での話)
・日本には世界の観光地と比べても極めて豊富な観光資源が存在し、また未開発なものも 多い。
・観光開発は今問題の地盤沈下地域の活性化につなげる最大のポイントである。。
・地域における産業開発、農林業の再生、環境問題とも関連してそれを進めることができ る。

前原大臣は前政権がめざした2020年までに外国からの観光客を倍増するという計画
を前倒し、それを2016年までに達成するというプロジェクトを推進するそうだ。そのためにも、そのプロジェクトは、鉄道、道路、港湾、航空などの行政問題、プロジェクトととも関連してくる。今問題になっている高速道路無料化の問題、整備新幹線の問題、国際空港のハブ化などの諸問題とも密接に関連する問題だ。

例えば羽田空港のハブ化にともなって新幹線が羽田空港まで乗り入れる案も検討されるということ、成田空港、関西空港の活用も観光開発、資源開発という観点から見れば新しい視野が開けるという話も納得である。地元の利害ばかり叫びその問題を末梢的にしか見ていない知事など問題外である。

その伝で行くと、あの亀井さん、なぜ沖縄にカジノを作るなどという話を出したのか、逆に少しわかってきた思いである。それについては前原大臣は否定的意見を述べていたし、カジノなど次元の低い話はやめてもらいたいが、沖縄基地問題もただ防衛という観点だけから見ていると暗い話ばかりになるが、沖縄は日本でも有数な観光資源を抱えている観点から見るとまた新しい視野が開けるというものだ。カジノかどうかは別にして、沖縄に世界中からの観光客を呼びたいし、いやその可能性は大いにあるということだ。

沖縄の基地問題が重要でないとは言わない。献金問題などどうでもよいとも言わない。天皇国事行為論もそれはそれでやったらよい。しかし今国家生き残りのために与野党が一致して考えなければならないのはまさに、この国の長期成長戦略なのである。沖縄を一大観光地にしようなどという話、地元を含めて、与野党一体だれが反対するだろうか。

そういう楽しく、夢があり、しかもその結果は誰にとってもいいはずの観光立国への道筋の話をもっとせよと言いたいのである。

tad

2009年12月27日日曜日

問題先送り首相

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別に社民党の外交政策だ、防衛政策を支持するわけでないが、党として、首相が普天間基地の国外移転の有力先であるグアム移転を否定したことに抗議、疑義を呈したのは当然ではないか。いつもそうだがどうして、鳩山首相という人、まだ決まってもいないことをこう軽がるしく発言するのだろうか。

要するに国外移転など最初からこれっぽちも念頭にないのである。国内だって、今のとこころ、具体案などなさそうである。ただ社民党を納得させるためだけのために、問題先送りしたように見える。アメリカとの当初合意を反故にしてもである。いや、どうせ辺野古へ移転するのだから、アメリカもそれで納得するとでもいうお考えなのか。それが結果的には同盟国アメリカの不信を買い、連立の社民党を結果的に裏切ることになる。最悪である。両方立てようとして、結果的には両方から不信を買うだけなのである。

グアムのほかにどこか有力な移転先はあるのか。国内外を問わずそれを真剣に検討している気配はない。そのあてもないのに、ただ問題解決を先送りしているようにしか見えない。誰にもいい顔をしようとして、結局は連立パートナー、そして同盟国への裏切りになるのだ。誰かの台詞ではないが、「こりゃダメだ」 である。

2009年12月25日金曜日

鳩山さん辞任は当然です

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あの記者会見はほんの一部しか見なかった。見ていて一体なんの意味があるのだろうか。質問も答えも前向きの話など一切ない。互いに無意味なことを繰り返して言ってるだけだ。聞いていていて悲しく、いたたまれなく、そしてむなしくなるだけだ。

当初国会で毎日のようにこの問題を野党から追及されていた頃は、献金偽装だけの問題だった。故人の名前を騙って献金の形を取ることなどもちろん言後同断だし、法律違反だ。が、要するに誰からもらったものでない、自分の金を使っての偽装であったから、たいした「悪質性」はないと思っていた。世論も説明をきちんとしていないことには批判があったが、その偽装行為自体、謝罪すればすむ程度の問題だと思っていたにちがいない。

だからこそ鳩山政権発足時は、その問題すでにあったにもかかわらず、あのような高い支持率であったのだ。しかし、あの贈与の問題が新たに出てきてからはその雰囲気はがらりと変わったと思う。鳩山首相のやっておられたことは要するに脱税なのだ。

大金持ち一族が贈与のこと、相続のこと、またそれに掛かる税金のことなど知らぬわけがない。世間の金持ち、小金持ち、いや、私など一般庶民はほんのわずかな金を親などからもらう場合でも、わざわざそれを何年間にも分けて、税制の許す範囲で贈与の形をとったものだ。場合によっては、それは全く別のケースだが、わざわざ税金を支払って贈与を受けたこともある。

今度の民主党の経済対策の中に家を立てる場合、親族から資金援助をしてもらう場合の税制上の優遇措置がある。あの政策について鳩山首相は一体なにを思ってゴーサインを出されたのだろうか。その政策の関わる額とはせいぜい500万円とか、1000万円とかの数字なのである。それに規則を変えてまでも税制上の特典を与えるのである。

鳩山さん、十何億のお金をもらい、6億円もの贈与税を払うのだという。それで規則上ののことは済むそうだ。あきれてものが言えない。贈与税については法人税などにある罰則、重加算税的なものがないということも初めて知った。要するに贈与の事実が一切表にでなければ、一円も税金を支払わないで済むらしいのだ。そんな馬鹿な。国のトップたるものが、そんな普通の常識人なら誰でも知っているような税制のことを知りませんでしたですむわけがない。いや、仮に本当にそのことも、そして実際にそれを受けていたことをご存知なかったとしても、そんなことが許されるわけがないのである。

記者会見で、鳩山さん例によって軽いというか、ご本人としては極めてうかつなコメントをされている。もし民意がこうした行為を許さないということであれば、辞任の可能性もあると示唆されたのだ。いや、世論がこのような行為を許すはずがない。今後出てくる世論調査の結果は火を見るよりも明らかではないか。

この事態を受けて、鳩山総理は、国家国民のため、またご本人が強調される政権交代の政治的意味の実現のため、さらに今後4年間、政権交代によって、国民のために民主党が行おうとしているマニフェストを実現するために、直ちに辞任されるべきである。

tad

2009年12月24日木曜日

評価できる予算大綱と問題点

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来年度予算大綱が決まった。厳しい経済状況の中、マニフェストの実現、当面の景気対策、財政規律維持、長期的国家戦略など勘案しながら策定していく国家予算、落ち着くべきところに落ち着いた予算大綱だと評価していいのではないか。

以下大綱全体についてのコメント:

・予算大綱策定の過程がオープンに示された意味は大きい。

これまでの政権にあっては予算の作成過程がこのようにオープンな形で国民の前に示されたことなどなかった。今回の新政権にあっては、党と政府間のやりとり、各省庁間の利害調整、各大臣の見解とそれを受けた首相の裁断過程などがオープンに示されたことの意味を高く評価したい。

こうして決まった予算大綱については鳩山首相は、アメリカの大統領が年初に行う年頭教書演説のように、その全容について詳しく説明する機会を持つべきではないか。それは通常国会冒頭の所信演説というものになるのだろうが、新政権発足時のような、理念中心の抽象的内容でなく、この予算が現行経済、社会環境下における最善の予算措置であることを具体的に説明してもらいたいものだ。

・マニフェストの一部変更、先送りはやむをえない。

暫定税率に関わるマニフェストの変更は明らかに公約違反であり、国民に謝罪すべきだ。ただガソリンを安くすることが大切か、総合的な景気対策を優先するか、暫定税率廃止をやめても、子育てなど他の重要マニフェストを優先するか、環境対策をどうするのかなど問うならば答えははっきりしている。今回の措置は必然なのだ。この決定にいたる全容を率直かつ明瞭に説明することで国民の理解は得られると思う。

・「地方交付税増額」は地方主権への第一歩として高く評価される

子ども手当の財源は、全額国庫負担主張の総務省と財務省・厚労省が対立していたが、一部を地方や事業主が負担することで決着した。それは地方交付税がトータルでは増額されるということで自治体も納得するはずだ。これは地方分権推進という民主党の一丁目一番地または二番地ともいえるマニフェストとも合致するものである。

・農業所得補償の完全実施はとりあえず、コメ農家のみということになったが妥当な決定ではないか。そもそもこの政策の趣旨は「食料(糧)自給率」の向上ということであり、国民のもっとも重要な食料であるコメの国内生産維持という観点から始めることの意味、その実験的意味もあろう。他の重要マニフェストと並んで、これも非常に重要な国家的プロジェクトであるが、どうも他の省庁に比べ農水省の情報発信が少ないのはどうしたことか。

・少子化対策ともう一つの重点施策、教育改革の一環として、高校授業料の無償化が決まったことは喜ばしい。これまた長期国家成長戦略の重要施策の一つとして位置づけられるべきものだ。高校教育の事実上の義務教育化をめざす一方で、科学立国という長期目標を達成するためには、高校教育の専門化、具体的には普通課程高校より、農業、漁業、林業、工業、医療、福祉介護といった教科の専門化をはかっていくこと、そうした予算的配慮が必要だと考える。

・環境税の導入は2011年度をめざしているようだが、環境対策そのものが産業構造の変換を促すものであり、新しい成長産業育成にもつながるものだ。どうして思い切って次年度導入くらいの決断ができないのかである。

・すでに明らかになったように、厳しい財政規律を維持しながら、マニフェストの実現、長期経済成長戦略を展開していくための財源が絶対的に不足していることはは明白なのだ。消費税増税論議は絶対避けて通れないはず。それはどうやら来年の参議院選挙を意識してのことのようだが、まだ先送りをしている感がぬぐえない。野党自民党はむしろ消費税増税路線を前面に打ち出して選挙を戦うかもしれないのだ。無駄を削れば当面増税の必要なしというこれまでの民主党の言い分は大いに説得力を失った今、せめて消費税の増税論議を始める必要があるのではないか。

tad

2009年12月23日水曜日

自民党は再生できるか

きょうのBLOGリンクはこちらです。

今日の民主党のていたらくを見ていると、日本の政治をよくするためには、やはり自民党の再生が絶対必要だと思われる。自民党の政党支持率は選挙後最低ラインに低迷、民主党に倍近く開かれていたが、敵失のおかげで20%台に回復してきた。今の調子だと参院選がどうなるか、差をさらに縮め、追いつき追い越せるかどうか、という感じになっている。

今は民主党というより、鳩山内閣への支持が落ちているが、先日の朝日新聞の世論調査でも民主党そのものへの支持基盤はまだ手堅いようである。仮に鳩山首相が退任し、新しい首相が誕生した場合、内閣支持率、政党支持率とも一気に回復する可能性は残っている。民主党政権誕生のおかげで有権者国民は長年にわたる自民党政権がやってきた数々の失政を目の当たりにしてきた。今鳩山首相、内閣の三重苦といわれるもののうち、鳩山首相の献金問題を除いては、元々その苦のベースは自公政権が生み出したもので、今その後処理に追われていることであることも有権者国民は理解している。

民主党はもう「あんたに言われたくない」という台詞は使ってはならないし、使わないだろうが、国会審議の中で、民主党の施策を批判したり、問題点を追求したりすると、その大半の理由、根拠は過去の失政の後始末という形、説明になることは必然なのだ。それを横において追求などできたものでない。自民党再生のジレンマはそこにある。

そうした過去の失政を直そうとする民主党の施策に反対ばかりしていたら、再び国民の反発を受けることは目に見えている。むしろ反対より、修正、強化という観点から国民のための政策実現には協力する姿勢こそが国民の信頼を取り戻す大きな道筋であるはずだ。

今回の自民党運動方針案要旨は概念としては頷けるものもあるし、やはりあれっと思うものもある。いずれにせよ、こうした抽象的内容より、自分達の政策が民主党の政権のマニフェストとどこがどう違うのか、特に長期経済成長戦略について民主党のそれとどこがどう違うのかその内容をできる限り具体的に示すべきである。その意味では、その良し悪しはとりあえず横に置くとして。民主党のマニフェストについては、子育て手当、暫定税率廃止、高速道路無料化、農業戸別補償制度などなど、その内容は具体的で分かりやすいのである。自民党はそのそれぞれについて、どこが賛成で、何処が反対なのか、また反対の場合その代案はどうなのか、お得意の財源論(?)を含めて具体的に示す必要がある。

財源論といえば、自民党は流れとして、消費税を含めた増税の必要性を訴えるようだが、その場合民主党のタバコ税増税、環境税新設などの増税案に対してどのようなスタンスで望むのかも注目の的である。

民主党は政権党になった今でこそ、過去の自公政権の失政批判を控えているが、参議院国政選挙となれば、その過去の致命的とも言える失政については追求の構えであろうし、またそのネタはいくらでもある。もちろん互いネガティブキャンペーン合戦など見たくもないが、そうならざるをえない面も多々ある。事実、統計数字に基づく前向きの論争は大いにやったらいいが、デマ、風聞、イメージに基づくキャンペーンはやめることだ。8月の総選挙の自民党による最大の敗因はあのみっともないネガティブキャンペーンにあったことは指摘しておきたい。

tad

2009年12月22日火曜日

首相決断は妥当である

こちらのBLOGを参照ください。

民主党、社民党、国民新党から突きつけられていた注文、それに世論の動向を踏まえた来年度予算に関する首相自身の裁断、決断が示された。結果は概ね妥当であったのではないか。決まった以上もう与党内から異論が出ないだろうし、国会論戦を通じてその内容、妥当性を国民に説明していけばいいことだ。前途多難だが、丁寧な説明をすれば大方の理解は得られると私は考える。

鳩山首相の決断の二つの重要ポイントについてコメントしておく。

ガソリン税暫定税率の実質的維持について:

自公野党がこれを「公約違反」だと批判するのは当然だ。まさに公約違反である。それを認めた上で、国民にその理由をきちんと説明することだ。維持の理由は、まずなによりも景気対策、その他重要公約を実践するための財源が不足すること、これからの環境対策のために「環境税」などの新設が必要であり、その必要性を最小限に抑えるために、暫定税率維持は避けられなかったことである。

今年の4月だったか暫定税率が一時下がり、ガソリンが安くなって、民主党の政策が大いに支持されたことがあった。しかし最近はガソリン価格は安定し当時のような状態ではない。今回の決定では暫定税率は維持するが、仮にガソリン価格が再び高騰するようなことがあればしかるべきアクションを取るということになっているので消費者の理解は得られるのではないか。暫定税率は廃止するが、新しい税が出てくるということの方が筋が通っているという言い方もあろうが、衣替え維持は名を捨て実を取ったものだ。

子ども手当に所得制限をつけなかったこと:

こちらはもともと公約通りであり、問題はない。おもしろいのは公約を維持しても、変えても文句をいう、クレームをつけるところである。

子育ては家庭だけに任せておくのでなく、国家の重要事業という理念、公約を曲げなかったのはよかったのでないか。亀井氏などが鳩山首相の孫がどうの、自分の孫がどうのなどという論理は極端である。所得制限を設けないもう一つの重要な理由は、言うまでもなくそれを設けると事務作業が大変になるということだ。いや、あの定額給付金支給のことを思い出せばいい。制限を設けると言ってもどこで線引きするかは大変難しい判断になる。
ただたしかにそうして支給されたカネが間違いなく子育てに使われるようにするさまざまな工夫をどうするかという問題は残っている。来年度はとりあえず半額の支給から始まるが、その結果を見てその後の支給方針、方法をさらに考えてもいいのではないだろうか。

tad

2009年12月21日月曜日

ゲーム始まってまだ10分、内閣支持率再浮上のチャンスはある

今日の BLOG より。

「鳩山八方美人首相」の批判をBLOGで書いた。BLOGで交流する人たち、とりわけ民主党支持のさんりゅうさんなどからも、もはや解散総選挙で信を問うしというコメントをいただいた。いや、本当は政権を担当する側としてはそれくらいの覚悟を持って臨むべきだが、さすがにそれはまだその時期でもないし、必要性もなと思う。

鳩山内閣の真価は、今進行中の来年度予算編成の内容で決まる。その内容によってそれがどれだけ当面の不況対策となるのか、長期経済成長の土台作りになっているのかが決まってくる。それになによりもその予算が民主党のマニフェスト実現のための施策展開の根拠となっているのか、いないのかが明確になってくる。マニフェストのうち、なにが実行に移されようとし、何が変更されたり、とりあえず先延ばしになっているのか、が見えてくるのである。

マニフェストのうち、何がどういう理由で何がどう変更されたのか、先延ばしになったのか、中止になったのか、鳩山首相はきちんと説明しなければならない。またそれが説明できれば、少なくとも大半の国民はそれを納得し、支持率は再び60%台に回復することもあるだろうと私は考えている。またそうあるべきである。いや、そんな説明ができないようであれば、鳩山政権はまさにもうおしまいにしてもらいたい。

昨日日曜日午前中はいつものようにTVで各局の政治番組を見ていた。フジテレビ、テレビ朝日では、民主党政権内でいよいよ小沢幹事長の権力支配が高まってきたことが話題の中心であった。全般的には小沢批判が中心であるが、どうも聞いていると、鳩山首相があの優柔不断さで頼りない以上、さらに小沢氏に権力が集中していることが明確になった以上、いいにつけ悪いにつけ、もはや小沢氏が首相の座についた方がいいのではないかという暗黙の空気があり、またそのように発言したコメンテーターもいた。

しかし当の小沢氏にはその気がないようだし、民主党党内も、連立を組み社民、国民新党内にも鳩山首相への批判はなく、鳩山下ろしなどの空気は全く現状である。それはそのはずだ。内閣支持率低下は、主に鳩山首相自体の優柔不断さに最大の原因はある。連立与党の党首、閣僚もそれぞれ自らの主張、発言が、結果として鳩山首相の八方美人的コメントにつながっていることがわかっているから、非難のしょうがないのだ。その点ではあの麻生内閣末期の状況とは全く違う。

権力は確かに小沢氏が握っているが、その小沢氏を含めて、その周辺からも鳩山首相に対する批判など一切出ていない。例の小沢氏よる党からの強引とも批判された要望についても、マニフェストにしばられて、あれこれ悩む鳩山内閣への応援メッセージととらえる向きが多く、事実そうではないのか。それは小沢氏が悪役を一手に引き受けたという形なのである。

あの要望自体がマニフェストの全面的な否定であったわけでなく、基本的には70%それを守りながら、一部変更であり、一部先延ばしであり、一部たしかに中止はあった。多少の変動はあっても、鳩山内閣はあの党の要望の線に沿った予算編成を行うだろうが、それでいいのではないだろうか。

マニフェストの一部変更、それは想定外の事態の変化に基づくもの、例えば想定以上の税収減があったこと、その後の社会情勢の変化のことなどを含めてその間のいきさつを説明すれば十分国民の納得のえられるものと私は考える。

第一、連立を組まざるをえない事情も選挙前には予想できなかったことではないか。社民や国民新党に配慮する結果、民主党支持者を裏切ったなどという言い分もおかしい。選挙前には明確な連立の想定などあろうはずがなかった。連立を組むこと自体がマニフェスト変更の要因なのである。鳩山首相はそうしたことをどうしてもっと正々堂々国民に向かって説明しないのかである。予算編成終了後そのことを含めて説明すればいいことだ。

小沢氏が党をがっちり抑えていることが何か悪いことのように言う評論があまりにも多すぎる。そうではないだろう。そのおかげで鳩山政権は与党内からは鳩山氏のリーダーシップ不足論など全く出てこないのである。小沢氏がそれを抑えているからである。

問題は鳩山首相その人である。八方美人的コメントはやめることだ。あちらにもこちらにもいい顔はできないのである。意思決定の過程をいちいち説明する必要などない。決まったことだけ、なぜそう決まったかの理由、根拠はできるかぎり懇切丁寧に説明することだ。

総合コーチ監督と相談しながら何処にパスボールを投げるか、パスでなく、力で中央突破を図るかを迷うことなく、あらゆることを実行していけばいいのである。こんな恵まれた体制の中でその指導力が発揮できないようであれば、司令塔失格の烙印を押されてもしかたがない。その意味でもチャンスはまだまだある。第一アメフトならば、まだゲームが始まって10分も経っていない状況なのだ。観客も、報道関係者もあまりにも結果について性急すぎる。


tad

2009年12月20日日曜日

八方美人首相

今日の BLOG より。


tad

2009年12月17日木曜日

民主党の予算要望・要旨には概ね賛成だが

民主党の予算要望・要旨:時事通信 
今日のBLOG記事
 
小沢氏の影響力から言って、政府の次年度予算案は数字的なものは別にして、ほぼこの内容で収まるのだろう。以下個々の内容について私自身の直感的な賛否のみ述べておきたい。それぞれの詳しい内容はこれら出てくることだし、まだまだその内容についてわからないところがあるが、仮に今の状況で、賛成か、反対かのアンケート調査されたとしたら、こう答えるということだ。

民主党が16日、政府に提出した2010年度予算に関する要望の要旨は次の通り。
【重点要望】とそれへの賛否。

(1)子ども手当 初年度は月額1万3000円、地方に新たな負担増を求めない。所得制限については、予算編成に当たり政府・与党で調整し、決定する。

賛成:子ども手当についてはもともと初年度13,000円ということになっており、地方に負担増を求めないことも公約通り。初年度分についての所得制限には基本的に反対。その後のものについてはただ与党政府内で意見を調整の上、なんらかの大きな制限を設けることはあってもいい。

(2)高校無償化 公立高校生の授業料を無償化、私立高校生には年額12万円(低所得者世帯は24万円)を助成。所得制限は設けない

賛成:公約通りであり問題なし。それと並んで高校教育の充実自体どうはかるのかの論議を進めるべきである。

3)農業戸別所得補償制度の導入 早急な導入が必要。要求額を確保し、土地改良事業に偏ってきた農業予算の大転換を求める。

賛成:公約通り。日本の農業体制の抜本的改革が必要な中、新政権誕生後、農業問題があまり出てこないのはどういうわけか。どうも赤松農林水産相のリーダーシップ・資質に問題があるのではないか。農業新規開拓の論議を活発に起こすべきである。

(4)地方財源の充実 原則として自由に使える1.1兆円を上回る規模の新たな交付金を国土交通省、農水省において創設する。

賛成:公約通り。地方分権化への第一歩。もっとも地方が本当に自主独立の精神をもっと持つような意識改革をどうやって進めるかが問題。なにかと言えば陳情マインドがまだまだ根強く残っているようだ。自分達により負担が来る様なことにはとにかくなんでも反対というスタンスがしみついている。名古屋市を始め地方が行政、立法(地方議会)改革をどんどん進めるような空気をもっと助成するようなことをやるべきだ。名古屋市のような改革モデルをもっと後押しをするような施策が今必要なのではないか。

(5)過疎法の延長:賛否保留。

(6)国と地方の協議の場の設置 法律に基づき設置、所要の法案を次期通常国会に提出すべきだ。

賛成:内容については(4)で述べたとおり。地方分権に関する小沢氏の考え、例えば橋下知事あたりの道州制モデルとは大分ちがうところがあるようだ。その当たり、今後の大きな方向を打ち出すための調整論議をどんどん進めるべきでないか。

(7)整備新幹線の整備 早期開業のため必要な予算措置を講ずる

賛成:但し九州長崎の新幹線のように根本的に見直しまたは中止すべきというものもあるのではないか。

(8)高速道路の整備 新直轄事業を取りやめ、これに見合う額を国が高速道路会社に対し支援する所要の法律を手当てする。

賛成:上の新幹線と同じようにもうほぼ完成に近いもので、特に地方が必要としているものについては完成させるしかない。ただそれを国直轄でなく地方がそれぞれの判断でやることにしたことはいいのではないか。地方の判断で不要となったものはやめていい。

(9)診療報酬の引き上げ(10)介護労働者の待遇改善(11)障害者自立支援法廃止(12)肝炎対策の予算確保 

賛成:自公政権の間違った医療、介護、医療制度改革の第一歩。これこそ超党派の議論があっていいし、超党派の合意形成ができる問題ではないのか。

(13)ガソリンなどの暫定税率 現在の水準を維持する。ただし、原油価格の異常高騰時には課税停止ができるように法的措置を講ずる。

賛成:重大な公約違反であるが、あえ暫定税率維持に踏み切ったことはいい。ただし国民には謝罪の上、その意味、財源確保の必要性を訴えるべきであろう。

(14)高速道路無料化 影響を確認しながら段階的に進める。

賛成:現段階ではこれくらい表現でいい。まさに段階的に進めるべきこと。

(15)国直轄事業の根本的見直しと地方負担金の廃止 10年度は維持管理負担金の廃止を決定すべきだ。

賛成:(4)の地方分権化推進のための具体策である。その一方で地方は自主独立の財政健全化をはかるべきことはいうまでもない。

16)租税特別措置を見直し、効果の乏しいもの、役割を終えたものは廃止すべきだ。

賛成:当然の方向である。

(17)土地改良予算の縮減 要求額4889億円を半減し、所得補償制度等の財源とする。
賛成:但し(3)と同じその内容、これまでの制度にしたがってやってきた農家への影響、所得保障制度の効果などについてさらなる議論の展開が必要。なぜこれを(3)とからめて一緒に論じないのか。

(18)環境税は今後の検討課題とする。

反対:どうしてこういう抽象的表現にとどめるのか。新年度から即実施でなくてもいいだろうが、早急にこれを制定し、できるだけ早く環境税をスタートさせる国家的使命があるのではないか。ガソリン暫定税率を維持することとワンセットになっているということであればある程度国民の理解は得られるだろうが、それはそれ、これはこれ、すなわち環境税というものの社会的意味を浸透させるためにも是非早期実施が必要だと考える。

民主党の予算基本案について賛成か反対かとの「アンケート」であれば、結局上記のようにほぼ全体的に賛成となる。一部完全にマニフェストに反することもあるが、それについては有権者に対し、十分なる説明が必要であり、それがあれば大半の理解は得られると思う。

政府はこうした党の方針を受けて最終的な予算案を作成することになるのだろうが、大切なことは予算案策定に当たっては来年度のことだけでなく、今後3年間の国家の財政経済政策によって経済をどう立て直すか、さらに長期の経済成長戦略とからめて国民にわかりやすく説明して欲しいということである。

もう一つ民主党の重要なマニフェストに年金制度改革がある。これと予算案が無関係であるわけがない。厚生労働省だけの問題でなく、これも国家戦略室がからむ重要テーマであるはずだ。

tad

2009年12月16日水曜日

成長戦略検討チーム

「民主党には成長戦略がない」というのが野党自民党の批判であり、マスコミ経済評論家もそれをいうものが多い。例の「あんたに言われたくない」の伝ではないが、では政権担当をしていたころの自民党、また8月の総選挙の自民党のマニフェストに成長戦略があったのかと問いたい。自民党の選挙マニフェストでは、「平成22年度の後半に年率2%の経済成長を実現し、10年以内に1人当たりの国民所得で世界トップクラスに引き上げる」程度の内容でしかなかったのではないか。そんなものが成長戦略なのか。

いずれにせよ、目先の経済対策も大切だが、長期的な経済成長目標、その実現のための戦略を策定することの重要性、必要性は言うまでもない。政権交代後、国家戦略室なるものが誕生して、そこがその長期の国家戦略を策定するところであるはずが、これまでこれと言った仕事をしてこなかったことは事実だ。このニュース記事を見てやっとそれが始まったかという感じである。

その検討チームの会合に有識者や各省庁からの意見を聞く、その中には竹中平蔵元経済財政担当相も入っていて、そのやり取りを報道陣に公開して行うそうだ。それは画期的なこと、大いに結構なことではないか。竹中氏の参加により、小泉政権時代の成長戦略と民主党がこれから行おうとする成長戦略のどこがどう違うのか、共通点があるのか、ないのか是非一般国民にもわかるような議論が展開されることを期待する。

いや、この議論、先の事業仕分けのこととちがって、ややもすれば経済専門家だけに通用する抽象的なマクロ経済の話になる可能性が高いが、それはある程度やむをえないとして問題は、その成長戦略が当然のことながらこれから民主党が実施して行こうとするとする子育て手当、高速道路無料化、農業所得補償、地方分権化などのマニフェストとどう関連しているのか、していないのかについて関連付けた話になっていくべきなのだ。そうしたものは長期の成長戦略そのものであるべきことは言うまでない。竹中氏がそれについてどのような批判を展開するか非常に興味のあるところだ。逆に竹中戦略の中でなるほどというものがあればそれを取り入れる位の度量が必要である。

再度言うが、こうした議論がオープンに展開されること自体が非常に意味のあることだ。国民がただ目先の経済のことでなく、長期のこと、10年、20年先の国家のあるべき姿、さらにそれに至る過程について考える機会を持つことは非常に大切なことだ。

その骨格は年内に打ち出すが、最終的な取りまとめは5-6月頃になると、時事通信の記事は伝えている。それには大きな疑問がある。どうしてそれくらいのものが、2月末くらいまでにまとめられないのだろうか。第一それがまとまってないと、民主党の掲げる重要マニフェストを実行するための法案制定にも支障をきたすのではないかと思うのだ。

tad
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2009年12月15日火曜日

誰がために鐘はなる:For whom the bell tolls

ノーベル賞経済学者ポール・サミュエルソン氏が死去: asahi com

高校を卒業して入学したのは公立大学の経済学部。そもそも高校生の身で経済学とは一体なにか、全く分かっていなかった。分かろうともしなかった。当時経済学というといわゆるマル経( マルクス主義経済学)と近経( 近代経済学)とがあり、私が進んだのはその近経の方であったわけだ。

その意味内容についてある程度理解できたのは入学し、一年目の教養課程を経て、二年目から経済学のABCを教える教科が始まってからのことだ。経済学の祖 アダム・スミスや、今日においても不況時何かと国家の財政出動、公共投資の有効性のことで登場する ケインズ経済学のほんの基礎的なことを学んだわけだ。

当時はまだ東西冷戦時代マル経か、近経かの対比はまだ生きていたというか、意味のあった時代でもあった。1989年、ベルリンの壁崩壊でソ連社会主義社会が崩壊し、この世から事実上マルクス経済学を教える大学がなくなったのは、大学を卒業し26年、もう中堅サラリーマンになった頃のことである。「大学で まだやっている 社会主義」、当時始めた時事川柳の一つにそういうのがあった。もう社会主義経済理論もそれを具現した社会など存在しない。それでも、一部の大学ではまだそんなものを教えているところがあるようだ、という皮肉をこめたものであった。

大学で学んだ経済学など殆どその中身を理解していなかったのは無理もない。大学に入るまでが、大変で入ったとたん勉強など殆どしないというのが当時の一般学生の風潮、最大の関心はいかにいい会社に就職するかだけであった。教授の講義のノートを取り、その一部をマル暗記すれば単位は十分とれ、卒業できたのだった。

その中でも私自身また周辺の友人は比較的好学心に燃えていて、経済学を原典、すなわちケインズなどの著書を英語で読むサークルを作って勉強しようとしたのだった。外国語本など今ではいくらでも入手できるが、当時はそれは丸善書店くらいでしか入手する方法はなく、大阪心斎橋の丸善まで行ってケインズの本を買ったものだ。当時1ドル360円の時代だったから、一冊多分2000円3000円はしたはずだ。なんとかそれを買って仲間3,4人で読書会を始めたのだった。それは語学力がなく、しかも専門知識もない中それは大変難しく、半ページ読むのに1時間もかかったから、あまり進まず、結局投げ出してしまった。だが、そうした経験は今から見ても決して無駄でなかったのだ。

ちなみにこの記事にあるポール・サミエルソンはいうまでもなくケインズ経済学の継承者だがまだ学生当時はその存在は知らなかった。このECONOMICSという本はサラリーマンになってから20年後位の時に買った本だと記憶する。こんな分厚い本を全部読んだわけでないが、拾い読みしてもある程度その内容がわかるようになったのは、それでも学生時代からケインズについては少々学ぶところがあったのと、社会人になって世の経済の動きというものを実体験することになって初めてその意味がわかってきたということである。

そのポール・サミエルソンが11月13日自宅で亡くなられたというニュースを読んでいろいろなことを思い出したのだった。もうめったに本棚など見もしないのだが、このECONOMICSの本を見つけた時はうれしかった。

今鳩山政権の中では来年度予算をどういう規模にするかもめているが、それは一つには、ケインズ派のサミエルソンなども説いている不況時の政府公共投資の有効性の程度をめぐってのことである。不況脱出のため、政府の財政出動の必要性をなん人も否定するものではないが、社会的インフラが相当程度整備されてきた今日それだけがトータルの有効需要を高める道かということをめぐっての議論なのである。「コンクリートから人」というキャッチフレーズの意味は相当深遠なのである。

かっての政府による財政出動の絶対的な有効性を未だ信じる立場、いやそれよりも、社会環境の変化、個人の価値観の変化に伴う個人消費拡大に導くことの方が時代の要請にあっているという立場の対立なのである。その議論は閣内のみならず、与野党、経済学者、識者間で真剣に議論すべき問題である。

それがどうあろうと予算案の方向性が決まったならば、その意味、意図、期待される効果については政府は出来るだけ分かりやすく国民に説明し、結果としてまさにその効果を挙げることについて協力を求めることが必要である。

ポール・サミエルソンの「経済学」の前書きのタイトルは「誰がために鐘はなる」である。経済学とは一体誰のために、一体なにをするためにあるのか、そしてその成果をために政府は一体どうすべきかという問いかけなのである。


tad

2009年12月14日月曜日

それを言っちゃあ、おしまいよ

鳩山内閣が発足して最初の所信表明演説があり、自民党の谷垣総裁が民主党の財政政策を批判したことに対し、鳩山首相が「あなたがたに言われたくない」と反論したことがその後いろいろ論議を生んだ。「それは当然だ、もっと言ってやれ」、という派、いくら言ってもいい足りない位だという派がいる。その一方で、そうしたものに対しては、政権を担う以上も、もうそれは言うべきではないという派に分かれる。

その後の国会論戦でも、鳩山首相をはじめ閣僚は質問に対する回答の中でできる限り、そうした言い回しを避けてきたようだ。それは正解だろうと思う。そうではないか。政権を取った以上いいにつけ悪いにつけ、過去のすべての遺産を引き継ぎ、それをどう将来に生かして行くか、言葉は悪いが殺して行くかを決める責任を100%与えられたのだから、この産経新聞の記事にあるように昔がこうであったからしかたがない、などという言い訳を一切してはならぬことはいうまでもないことだ。

民主党政権が、つい2,3か月前まで行われてきたことを中止したり、凍結したりすることは山ほどあって、それを見た元与党関係者がそれについて悔しい思いをしていることなど想像に難くない。その思いがついつい過剰にすぎる反感の言葉となって返ってくること位、現政権が寛容に受け取める位の度量がないことを政権担当の能力不足と言われてもしかたのない面もあろう。

そうはいうものの、自分達の過去の行動についてなんの反省もなく、どうしてそれが国民から手厳しい批判を受けたかという真摯な言動もなく、相変わらず自らのかっての誤ったての行動のみを正当化するような論調を繰り返す元与党のやからが存在することも事実である。

昨日のテレビ朝日サンデープロジェクトの普天間基地問題で出ていた町村氏などがその典型だ。今普天間問題が大混乱しているのは、そもそも民主党の外交・防衛政策はめちゃめちゃであり、なんの一貫性もないからだと勝ち誇ったように言っていたことである。自分達がいかに十数年かけ、苦労して今日の普天間移転案を形成してきたかを得々としゃべり、それに従わない民主党が無能だというのだから聞いていてあきれた。

この討論には民主党側からは防衛の専門家でもなんでもない渡辺総務副大臣が出ていたが、それについてたいした反論はできていなかった。が番組コメンテーターの高野氏が、そもそもこうした問題の根本原因を作ったのは、自公政権のアメリカべったりの外交・防衛政策そのものではないかと反論していたので、討論のバランスが取れていたというものだった。政権が変わった以上、いくら外交・防衛政策の継続性ということがあっても、その原点自体を問い直すという作業があって一体なにが悪いのだろうか。

司会の田原総一郎という人、いつものアジテーター的司会で、そもそも混乱の原因は鳩山首相の防衛政策そのものであって、鳩山氏が10年も前に主張した「駐留なき安保論」によるものだと一方的な決め付けた論をさかんに展開するのであった。さらに付け加えて、岡田外相のことをうそつきだとまで言ったのだった。多分、多分である、それまでこの問題で依頼したら出演してきた岡田氏が、この微妙な時期主演を断ったことに対する腹いせであろうと思われる。一国の外相をうそつき呼ばわりするこの司会者、これは一体どういう人物なのか。まさにこういう発言こそ「それをいっちゃおしまいよ」ではないのか。

tad

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参考記事:産経新聞

2009年12月11日金曜日

子ども手当は国が負担すべである

政府が来年度から支給予定の子ども手当の財源について、長妻厚生労働相は8日の「国費負担が基本だが、(児童手当の)現行負担を超えない範囲で(地方自治体に)お願いする選択もある」と述べたことに地方が大反発したことは当然だろう。原口総務大臣もそれに反対を唱えている。

想定以上の財源不足で民主党が掲げたマニフェストのうちどれを優先し、どれを先延ばしするかはこれからの予算編成作業の中で具体化していくが、子ども手当のまず来年度半額支給は優先事業として実施するという方針だ。子ども手当そのものについてもまだ所得制限を設けるとか、設けないとかの議論も残っているが、まずは半額だが、所得制限なしで支給を開始する。ただその場合税源として一部地方分担を長妻厚生労働相が言い出したことに地方が反発したことは当然ではないか。マニフェストに誰が負担するかなどと書いてないなどという言い分は詭弁であるとする原口総務相の言い分の方が正しい。

民主党のマニフェストのうち最近よく出てくる言葉だが、地方分権と子ども手当はまさに一丁目一番地、二番地なのだ。地方分権化の論議はまさに今始まったばかり。地方分権化が進んでからはさまざまな国の事業を地方が一部どころか全面的に負担するような時は来るかもしれないが、今はまだまだそういう形になっていない。民主党が重要マニフェストをこのように実現しましたということを示すためにも、まずは国が全面負担することで始めるべきでだ。

子ども手当創設は少子化対策のための国家百年の大計の一つであるはず。民主党のマニフェストに国家ビジョンが見えるとか、見えないとかいう批判に応えるためにも、こんな基本的なことで閣内不一致を見せること自体が問題である。閣内の議論は大いに結構だし
それがオープンに出てくることも悪いとは言わないが、こういうところでも鳩山首相自体がぴしりとその基本的な方向性を出すべきなのである。

tad

参考資料:

BLOG(まいにちまいにち):http://blogs.yahoo.co.jp/tadhayase/folder/1224577.html
住民税使うなら「子ども手当」拒否…神奈川知事: http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091208-OYT1T01147.htm 読売新聞
子ども手当財源、地方負担に反論 地方6団体声明 : http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091210AT3S1001210122009.html 日経新聞
子ども手当、「地方負担ありうる」長妻厚生労働相: http://osaka.yomiuri.co.jp/mama/society/ms20091209kk04.htm 読売新聞

2009年12月9日水曜日

政治とカネ

今日の BLOG より。


tad

2009年12月8日火曜日

2009年12月7日月曜日

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