2009年12月24日木曜日

評価できる予算大綱と問題点

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来年度予算大綱が決まった。厳しい経済状況の中、マニフェストの実現、当面の景気対策、財政規律維持、長期的国家戦略など勘案しながら策定していく国家予算、落ち着くべきところに落ち着いた予算大綱だと評価していいのではないか。

以下大綱全体についてのコメント:

・予算大綱策定の過程がオープンに示された意味は大きい。

これまでの政権にあっては予算の作成過程がこのようにオープンな形で国民の前に示されたことなどなかった。今回の新政権にあっては、党と政府間のやりとり、各省庁間の利害調整、各大臣の見解とそれを受けた首相の裁断過程などがオープンに示されたことの意味を高く評価したい。

こうして決まった予算大綱については鳩山首相は、アメリカの大統領が年初に行う年頭教書演説のように、その全容について詳しく説明する機会を持つべきではないか。それは通常国会冒頭の所信演説というものになるのだろうが、新政権発足時のような、理念中心の抽象的内容でなく、この予算が現行経済、社会環境下における最善の予算措置であることを具体的に説明してもらいたいものだ。

・マニフェストの一部変更、先送りはやむをえない。

暫定税率に関わるマニフェストの変更は明らかに公約違反であり、国民に謝罪すべきだ。ただガソリンを安くすることが大切か、総合的な景気対策を優先するか、暫定税率廃止をやめても、子育てなど他の重要マニフェストを優先するか、環境対策をどうするのかなど問うならば答えははっきりしている。今回の措置は必然なのだ。この決定にいたる全容を率直かつ明瞭に説明することで国民の理解は得られると思う。

・「地方交付税増額」は地方主権への第一歩として高く評価される

子ども手当の財源は、全額国庫負担主張の総務省と財務省・厚労省が対立していたが、一部を地方や事業主が負担することで決着した。それは地方交付税がトータルでは増額されるということで自治体も納得するはずだ。これは地方分権推進という民主党の一丁目一番地または二番地ともいえるマニフェストとも合致するものである。

・農業所得補償の完全実施はとりあえず、コメ農家のみということになったが妥当な決定ではないか。そもそもこの政策の趣旨は「食料(糧)自給率」の向上ということであり、国民のもっとも重要な食料であるコメの国内生産維持という観点から始めることの意味、その実験的意味もあろう。他の重要マニフェストと並んで、これも非常に重要な国家的プロジェクトであるが、どうも他の省庁に比べ農水省の情報発信が少ないのはどうしたことか。

・少子化対策ともう一つの重点施策、教育改革の一環として、高校授業料の無償化が決まったことは喜ばしい。これまた長期国家成長戦略の重要施策の一つとして位置づけられるべきものだ。高校教育の事実上の義務教育化をめざす一方で、科学立国という長期目標を達成するためには、高校教育の専門化、具体的には普通課程高校より、農業、漁業、林業、工業、医療、福祉介護といった教科の専門化をはかっていくこと、そうした予算的配慮が必要だと考える。

・環境税の導入は2011年度をめざしているようだが、環境対策そのものが産業構造の変換を促すものであり、新しい成長産業育成にもつながるものだ。どうして思い切って次年度導入くらいの決断ができないのかである。

・すでに明らかになったように、厳しい財政規律を維持しながら、マニフェストの実現、長期経済成長戦略を展開していくための財源が絶対的に不足していることはは明白なのだ。消費税増税論議は絶対避けて通れないはず。それはどうやら来年の参議院選挙を意識してのことのようだが、まだ先送りをしている感がぬぐえない。野党自民党はむしろ消費税増税路線を前面に打ち出して選挙を戦うかもしれないのだ。無駄を削れば当面増税の必要なしというこれまでの民主党の言い分は大いに説得力を失った今、せめて消費税の増税論議を始める必要があるのではないか。

tad

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