2013年4月16日火曜日

米Yahoo在宅禁止令の波紋


「6月以降は全社員が出社して勤務するように」。インターネット大手、米ヤフーが出した社内通達が、自由な風土で知られるシリコンバレーで話題となっている。従わない場合は退職を迫られる内容。ヤフーは実体のない在宅勤務者が多いとも報じられており、経営再建に注力するマリッサ・メイヤー最高経営責任者(CEO)の堪忍袋の緒が切れたようだ。

 米IT(情報技術)関連ブログサイト「オールシングスD」によると、通達は人事部門トップ名で22日に社外秘のメモとして社員に送られた。通達は「通路や食堂での何気ないやりとりが、素晴らしい決断や考えにつながることは少なくない」と指摘。「オフィスでのみ可能となる意思疎通や経験が大切だ」と強調している。

 シリコンバレーのIT企業の多くでは結果が重視され、カジュアルな服装や柔軟な勤務形態が知られる。在宅勤務は育児や介護などに不可欠だという意見や、労働生産性を向上させるという調査結果もあり、今回の方針転換は論議を呼びそうだ。(シリコンバレー=岡田信行)nikkei  2月26日

米ヤフー新任マイヤーCEOが在宅勤務を禁じる通達を出してから2カ月近く経過したが「働き方の自由」と「生産性向上」の両立は洋の東西を問わずいかなる企業にとっても重要なテーマである。

この問題を巡っては、賛否両論、世界各国で議論が沸騰しているようだ。在宅勤務など当たり前と思っていた欧米社会ではすでに、それが相当普及している現状だ。当初はこの禁止令圧倒的に否定論が多いかと、想像したが案外そうでもなく、肯定論も結構あるという状況である。そもそも在宅勤務などの考えになかなか馴染めない、馴染まない日本の企業社会では、そら見たことか、在宅勤務などダメに決まっていると改めて膝を打つ経営者も多いに違いない。

在宅勤務禁止などというのはいかにも女性経営者らしい発想だという一言で片付ける論調を見かけるが、マイヤー氏がなぜこんな決断をしたかというがある。実は氏がGoogleという企業文化で育ったことと無関係ではなさそうだ。

話は少々飛躍するがもう一年も前のことNHKのドキュメンター番組で、日本Googleの技術開発責任者及川卓也氏が、さまざまな開発テーマにチームとして取り組む様子
その方法論を紹介していた。彼自身はもちろん毎日本社ビルに通勤で出社し仕事をこなす。20人30人のそれぞれの分野の専門技術者も全員出社し、それぞれ食事、飲み物などすべて無料、快適なオフィス空間、場合によっては自分の好みの場所で、自らの研究テーマに取り組む。それと共にプロジェクト毎にチームとして、たえずさまざまな会議を繰り返し行ないその成果を挙げていく様子が紹介されていた。私はその時は、ちょっと意外な思いも含めて、その一方でなるほどなるほどという感じてそれを観ていた。

ああした光景、ワークスタイルは実はGoogle日本だけでなく、Googleの一つの企業文化ではないかと今になって思い起こしたのだ。おそらくメイヤー氏の今回の決断が、氏自身がそういう環境の中でGoogleのさまざまな製品サービスを生み出してきた経験に基づくのではないかと、これは私自身の勝手な想像である。でない限り、今や一般企業とりわけネット事業企業にとっては、当たり前の在宅勤務を頭から否定するような意思決定をするわけがない。

労働人事管理もなにも個々の従業員の生産性の向上というより、トータルとして、それぞれのワークグループがチームとしてどんな成果をあげるかが全ての目的なのである。そうした成果が挙げられなかったことが近年Yahooの業績悪化につながったという判断であったに違いない。

いやこの問題についての賛否両論をいろいろ読んでみても、そうもそうした見方が皮相的にすぎる印象がある。問題は在宅勤務というワークスタイルの是非、生産性論ももちろんあるが、要するにトータルとしての組織論、目的、目標を達成するため、そのプロジェクトについて成果をあげるため、それぞれの担当者を動機づけ、その成果をチームの成果としてまとめていくかというトータルの組織論こそが一番肝心なのである。

それが一見昔風というかクラシック風というか、それぞれの担当者は全て同じオフィスに常駐していてある意味わいわいがやがややることが大切なのだ。何かと言えば会議で集まってそれを論議の上、決めるというスタイルの方がやはり成果を生みやすい。

それが担当者はそれぞれその場にいなくても、在宅勤務と形で様々なネットサービスを通じてコミュニケーションをはかれる。それで同じ仕事がやれば、より効率的だという考えなのだ。さて本当にそうかどうか、それは確かに疑問である。

マイヤー氏なぜいま在宅勤務を禁止するかについては、その詳細なんら論理的に説明していない。ただ通達では「通路や食堂での何気ないやりとりが、素晴らしい決断や考えにつながることは少なくない」と指摘。「オフィスでのみ可能となる意思疎通や経験が大切だ」と強調しているだけなのだ。いや、どうしてそのことが全てだと言い切らないのか、在宅勤務を禁止するならそう明言すべきなのである。

言葉を変えて言えば、互いに顔を見合わせながらはかるコミュニケーションこそが真のコミュニケーションであって、ネットサービスを使ったコミュニケーションなど本物でない。その本物のコミュニケーションを戻すことが、その通達の真意であると言い切るべきなのだ。

この在宅勤務禁止令の話を聞いた時、私自身違和感を持ったことは事実だ。あれ?Googleにせよ、ましてやYahooにせよ、彼らのビジネスの中心はそのネットコミュニケーションを促進すること自体ではないのか。メールといい、BLOGといい、SNSといいすべてそうである。

それが、それを売り物にする企業がある意味そうしたものの有効性を疑わせるようなことをやり出したと取られてもしかたがないところがある。それは大いなる矛盾ではないかと指摘されたらマイヤー氏一体なんとそれを説明するのだろうか。

tad

関係記事:

在宅勤務禁止令:nikkei  2月26日
在宅勤務は仕事か…米ヤフーCEOが呼んだ論争 :nikkei 
米ヤフーの在宅勤務禁止論争、日本の企業風土では?:nikkei 
及川卓也氏のドキュメンタリー:nhk 

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