2013年2月10日日曜日

全ては参院選後なのか


「参院選優先内閣でいいのか:

安倍内閣が発足して1カ月余り。国会での所信表明演説、予算編成を見ていると全てが今夏の参院選を意識して重要な案件の先送りが目立つ。前任の野田内閣が苦労して消費税の段階的引き上げを決定したが、消費増税は社会保障との一体改革が前提だったはずだ。しかし、年金や医療などの改革論議は全く進まず、専ら来年4月からの消費税引き上げの環境作りのための経済政策に執心しているようだ。

 社会保障の中でも年金問題は喫緊の課題で、支給額の減額や保険料の引き上げなど小手先の改正ではいずれ近い将来に破綻(はたん)するだろう。医療費は高齢化、医療の高度化に伴い毎年、確実に増えており、早急な改善が必要だ。特に70歳代前半の医療費は本来2割が本人負担であるが毎年約2千億円の税金を投入して1割負担に抑えている。高齢者の反感を恐れ負担増を先送りしたのだろう。

 原子力発電や代替自然エネルギー、さらにTPPの参加をどうするのか安倍内閣の本心が見えない。このままアベノミクスに期待していると消費増税だけなされ、参院選で自民党が大勝すると、憲法9条改正や国防軍が創設されるのではないかと危惧している。この現状を冷静に判断し政治を注視していきたい。 中村和男  朝日新聞  

「勝てばなんでもあり:

 安倍首相の所信表明演説では、原発・エネルギー政策、社会保障改革、憲法・集団的自衛権問題への言及ナシ。安倍ミニバブルを何とかもたせて参議院選挙を乗り切り、参議院選挙で勝てば何でもアリ?小泉政権の郵政選挙と同じで、ひたすら刷り込みでしょうか」金子 勝 Twitter  

上の二つの記事、長々と引用させていただいたが、これからの半年先行われる参院選挙結果が日本、日本の政治がどうなっていくかを占う大きな岐路であることを示唆したものだ。安倍内閣の政権運営なかなか、したたかというか、ずるいというか、たいしたもので、衆院選前宣言していたアベノミクスの成果らしきものを円安、株高で示している。憲法、集団的自衛権など国防問題では、アルジェりヤのテロ事件、そして中国のレーダー照射事件などの追い風もあって、着々と世論を味方につけている感がある。

あの深刻な原発問題ももう風化してしまった感がある。消費税増税、もはや既定路線、なるほどなるほど円安で企業が儲かり、株が上がり、景気がよくなればなんとかなりそうだ。そういう雰囲気なのである。なにもかも、安倍首相とその取り巻きの思う壺のように世の中動いている感がある。

もっと調子に乗っていいところだが、その点さすが百戦練磨の自民党、安倍首相その本音を出すのはもう少し先、夏の参議院選挙を乗り切ってからとしているのは明白である。

それもこれも先の歴史的政権交代後の民主党菅政権が一年後の参院選でもろくも大敗しその後の民主党政権の崩壊につながったことを他山の石としているのだ。あれだけの熱狂的な民主党政権への支持があったのに、菅首相が消費税増税論を持ち出したとたんに参院選での大敗だった。その轍を踏んではならぬと安倍政権、誕生の瞬間から徹底して、国論を二分するような重要テーマ、消費税増税、社会保障改革、憲法、集団的自衛権、原発問題、TPP問題などの問題については、明確な姿勢を打ち出すことを封印し、一つ一つ世論の動向を見極めながらやって行く作戦なのである。それは戦略などという高尚なものでない。ただ選挙に勝つための作戦なのだ。なにが国家のため、国民のためということでなくとにかく選挙に勝つことが最優先なのである。

そんな手口、作戦は金子氏のような学者、政治経済の専門家でなくても、上記一般市民の中村氏や私のようなものにもそうした魂胆は見え透いている。要するに国論を二分し、国民の生活に直結する重大テーマについては、当面一切明確にして、具体的なことは言うの避けておこうとしているのだ。参院選で現在のねじれ現象を解消した上で、安倍内閣本来の本音というか、本来の狙いの政策を一気に打ち出そうということなのだ。

幸いなことに消費税増税は幸いにして先の野田内閣がその道筋をはっきりつけてくれている。後は約束通り、これで経済は増税を可能にする状況になりつつあるではないかということですむ。社会保障の一体改革はもともと公明と進めてきたものの延長でやればいい。もはや民主党の主張を取り入れる必要など全くない。

憲法改正、集団的自衛権、これについてはどうやら世論がかなり前向きに動いていることを察知し、自信を持っているらしい。近く訪米の際、日本が集団的自衛権の積極的見直しをオバマへのお土産とするつもりだったそうだ。ナイジェリヤのテロ事件や中国のレーダー照射事件が世論の追い風ともなっている。ところがその集団的自衛権については、おっとどっこい、オバマ政権、アメリカ自体、それは中国に余計な刺激を与えるから今回は持ち出してくれるなと釘をさされたらしい。

世の中そうなんでも思うように進まないものだ。そもそもアメリカは日本の軍備自体がこれ以上強力になることに期待していない。いざという時、もともと軍事面で日本の直接参加など、期待していないのだ。もちろん後方支援は歓迎だが、よくあるように、アメリカに向かって飛んでくるミサイルを日本が打ち落としてくれることなど期待していない。そんなことにより、沖縄の基地問題などもっとちゃんとやれよということだろう。要するにアメリカの本音はそんなことより、日本は黙ってアメリカの言うことを聞いてくれたらそれでいいのだという位のスタンスなのだろう。

実は集団的自衛権なんてことより、アメリカが今日本に一番期待しているのは、むしろTPPへの参加であり、アメリカの圧力業界団体が期待するように、ことを運びたいのだ。これまたみえみえではないか。自民党の中でもTPPに関しては慎重意見が多く、またことの運び方によっては参院選に大きな影響があることは分かっている。安倍内閣もさすがこれについてはその本音をなかなか見せないというところである。

こうしたすべての問題は、実はもはや待ったのきかない重要テーマばかりである。選挙が重要なことはわかる。が、言いたいのは、その本音を隠しておいて、できる限り有利に選挙を戦い、参院選挙後その本音が出てくる、出すということでは困る。

消費税増税、税制改革、社会保障改革、憲法改正、集団的自衛権、TPP、原発など懸案事項について、安倍内閣はそのの方針、その具体的政策、その実施のタイムスケジュールを明確に選挙の争点として国民に示すべきである。もちろんそれぞれの政策について、自公だけでなく、他の野党も明確にそれぞれのテーマについてそれぞれの政策を明示して選挙を戦うべきである。

日本人は実に熱しやすく冷めやすい人種である。あの福島原発事故の深刻な状況などもうさっぱり忘れ去ったような感がある。株高だ、テロ事件だなど安倍内閣に追い風ばかり吹いているわけでない。TVを見ていても、毎日地震報道のない日はない。どうしてこの事実を深刻に捉えないのか。

安倍政権になって、あの沖縄基地の問題の一体何がどう解決したというのか。うっかりかも知れないが、正直に普天間基地の海外移転を言った鳩山氏がどうして国賊扱いなのか。以前の沖縄基地の状況をそのまま引き継いで知らん顔をしている安倍内閣がどうしてこの問題に関してはなんの疑問符もつけられないのか。

消費税増税の道筋をつくったのは野田前首相だ。今の安倍政権、その部分だけうまく食い逃げの道具に使っているのだ。

日本ってやはり正直ものが馬鹿をみる国らしい。そういえば鳩山、菅、野田各前首相、みんなそうだ。鳩山氏は沖縄県民のの負担を軽減すべく県外移転を主張した。菅氏は原発事故の深刻さを経験して、脱原発を主張した。野田氏は財政赤字解消のための消費税増税を主張し、その道筋をつけた。その方向性自体それぞれみな正しいものと自ら信じ断行したのだ。そのプロセスがいかにも未熟であったことは指摘せざるをえないとしてもだ。

一方安倍首相はそうした個々の問題についてなんら明確な姿勢を打ち出していない。集団的自衛権については自信満々であったが、それが少しピンとはずれであったことに気づいたかどうかだ。

それは別にして、そうした個々の重要課題について明確な方向性を示し、それをもって参院戦に臨むべきことなど、一国の首相として政治家として一番大切なことではないか。

tad

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