2013年2月25日月曜日

既定路線のTPP交渉参加


「TPP交渉参加 今週にも表明:

NHKの「日曜討論」で、菅官房長官は、日米首脳会談で共同声明が発表されたTPP=環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加について、「自民党内の理解は得られると思う。そんなに長引かせる必要はない」と述べ、安倍総理大臣が今週にも交渉参加を表明することになるという見通しを示しました。

この中で菅官房長官は、日米首脳会談で、TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡って、「すべての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」などとした共同声明を発表したことについて、「安倍総理大臣が日本をたつ前には、共同声明を出せるかはっきりしないほどぎりぎりの協議だったが、首脳会談で意見が合ったようだ。日米関係を再構築する第一歩を踏み出すことができた」と述べました。
そのうえで菅官房長官は、「衆議院選挙で約束した『聖域なき関税撤廃が前提であるTPP交渉には参加しない』ことが基本だった。その前提がなくなったのだから、党内で理解を得られると思う。全く問題ない。そんなに長引かせる必要はない。安倍総理大臣も長引かせる意向ではないと言っている。あす、自民党の役員会に報告して、その状況しだいだ」と述べ、安倍総理大臣が今週にも交渉参加を表明することになるという見通しを示しました。」nhk

これが安倍自民党内閣と菅、野田前民主党政権の違いだろう。野田政権の時は、TPP参加の是非をめぐって党内が真っ二つ、それで実際に党が割れてしまった。世論もそれにつれてTPP参加については賛成・反対が二つに割れていた。自民党はその状況ががわかっていた。先の選挙の時、自民党の200名近い議員は、どちらかというとそれには慎重、さらに反対の立場であったはず。第一TPP参加を標榜していた野田民主党に対決するにはそれが得策、そしてそれが地元JAなどから支持を受ける条件でもあったはずだ。

それを菅官房長官、「衆議院選挙で約束した『聖域なき関税撤廃が前提であるTPP交渉には参加しない』ことが基本だった。その前提がなくなったのだから、党内で理解を得られると思う。全く問題ない」とまさに単純明快に集約してしまった。反対表明をしてきた議員もこれで矛をおさめざるをえないようなジェスチャーをとっておればそれで事足りるのだ。橋本維新共同代表、「これは日米会談の成果というより、党内向け。党内手続きを進めるために一歩一歩すすめたものであり、ものすごい政治手腕だ」(朝日新聞)とコメントしていた。そうなのである。これがあの民主党政権の未熟さとの違いなのだ。中身などどうでもいい。ようするに世論を上手く操作することが肝要なのである。

ツイッターなどでは、これで自民党の反対議員200名が反乱を起こすようなコメントが飛び交っているが、それも殆どなさそう。第一、肝心の新聞マスコミは総じてTPP参加交渉支持のようだし、それに新聞各紙の世論調査でも、TPP参加交渉への支持が反対を上回っているという状況なのだ。さらにそのことは内閣支持率の高さとも連動しているのである。

うーん先の選挙の時は少なくともTPPについてもそんな雰囲気ではなかった。もっと賛成反対が拮抗していた。当選してきた自民党議員自体はもはっきり反対的スタンスを示していたはずなのだ。この安倍首相の訪米がきっかけで、それがガラリと変わってしまう日本の世論って一体なんなのだろうか。国民はそのTPPの意味、中身を一体どれくらい理解しているのか、いないのか。

実は私、自身このTPP自体にについて、賛成・反対どちらか明確な立場ではない。反対派の言うことは当然わかる。一方で長い目でみたこの国家の構造改革という点ではそれが一つの起爆材としなければならないという意味での、交渉参加の必要性についてもっと議論をすることは大いにやる必要がある。やるべきなのだ。

問題は、それについての中身、その本質についてよく理解されず、十分な議論もされないまま日米同盟の維持のため、賛成だなどと短絡してしまうところがどうもおかしいのである。

安倍首相な今回の訪米が、このTPP参加がアメリカへのお土産と考えていること自体おかしい。そうしてさらにおかしいのは、これを成果とし、その結果それが日米の同盟強化つながるかのごとくかのごとく記者会見で述べていたことだ。アメリカがそれを望み、日本の参加を期待しているから、それを断ったら日米同盟が弱体化するからごとく発言しているのだ。

結果農業という聖域を守ったといういい分に単純にごまかされてしまったのは国民だけではない。昨日の朝日新聞のトップニュースはもはや聖域などという言葉は出ていない。安倍首相の聖域論にたいし、オバマは「車は例外と提案した」とある。つまりアメリカは車の関税は例外的に認めろ、その代わりに、コメへの関税は例外は認めようということである。だからそれでいいではないかというニューアンスのように見える。

なんじゃそれ、アメリカだって日本だって、政治、首脳の決断なんてそんなレベル、いかに圧力団体の支持をとりつけておくかがすべてであるとでも解説しておけばいい、その方がよほどわかりやすいのである。それをなにが、「米、車は例外、提案」だ。

それを安倍首相が記者会見で、今回の訪米の最大の成果として民主党政権と違って日米同盟をより強固なものとしたことを強調していた。さらにことさら、民主党政権と違い、原発政策を見直すことまで言及した。それがどれだけアメリカの国益に叶うのはよくわからないが、外国との首脳会談で、国内の反対野党、ましてや前首相のことをけなす首脳などかっていただろうか。

日米の同盟関係が重要であることなど誰も否定しないが、どうしてこうまで米国対し卑屈になるのかわけがわからない。要するにそれが中国への牽制の最大のポイントだと言いたいのだ。だから集団的自衛権のことまで持ち出した。そしてなんのことはない。沖縄のなんら進展のない辺野古基地への移転のことは、適当にごまかしてしまったというところなのだ。こちらはさすが民主党のせいにすることはできなかった。

アメリカにしてみれば。その忠犬ハチ公的態度は別に不快ではないに違いない。ただ同盟国というのならもっと毅然と自らの立場を守るスタンスを示す方がかえって互に信頼をきづく道ではないのか。

経済的には、アメリカは日本などよりよほど中国が大切なのだ。すくなく政府はともかく経済界はそうなのである。オバマにとっても農業団体より、自動車産業とりわけ労組の存在がが大切なのである。だから日本側からの聖域論にのって、日本車には関税維持ということにしたのだ。

それが当たり前でしょう。国益を守るという立場では、安倍首相もっと日本のそれを守ることについてはどうしてもっとぬけぬけという主張しないのかである。認めて欲しいではない、コメだけはなにがなんでも守る、これだけは絶対に譲らないくらいのことをどうしてどうして言わないのか。くだんの国民皆保険制度のこともそうだ。

こんな安倍内閣、安倍首相、そして自民党政権への高い支持率、そしてTPP交渉参加に賛成という高い支持が集まる理由、私には理解しがたいものがある。この問題確かに、これからの日本の行く末を決める重大な問題、テーマなのである。政界、マスコミを含めてもっと国民的議論が沸騰しておかしくない。

どうしてそうならないのだろうか。

tad

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