2013年3月28日木曜日

立法府の惨状


衆議院「一票の格差是正」をめぐる各地高裁の違憲、選挙無効の判決が一斉に出揃った。違憲状態だが、選挙自体は無効ではないという従来の司法判決が、選挙無効にまで踏み込んだのは画期的であった。そのことは今の立法府国会の成り立ちそのものが異常であることが司法によって指摘されたしたのであって、そのことこそが三権分立という正常な国家のガバナンスを維持するために必要不可欠なことだあったのだ。

安倍自公連立政権は、例によってとりあえず判決結果を「重く受けとめる」などと殊勝な態度ではある。しかし心の底では、秋に予想される最高裁の判決が、従来のように「違憲状態だが、選挙が無効とまで言えない」というわけのわからないものになるに違いないとなることを予測、期待しているようにも見える。

その最高裁、従来違憲であるというのならどうして、その選挙自体が無効であると踏みこまないのかそれが不思議、納得できないことだ。それが国政に大混乱をもたらすことはたしかだが、少なくとも問題になった選挙区の選挙が無効であるということでもいい。かってそれがあれば、今日のような事態になることもなかったはずだ。これはある意味、最高裁自体のだとするマスコミの一つや二つあってもおかしくないことではなかったか。

違憲訴訟のあったほぼ全ての今回の高裁裁判結果を受けて、今度こそ最高裁もより踏み込んだ判決をするだろうと期待される。いや、今度こそ明確に選挙無効の判断を下すべきではないのか。

問題の自公政権ここは、以前から主張していた「0増5減」案をとりあえず早期に成立させ、解散前自公民で合意していた、「議員定数削減」については、比例区を30ばかり削減し、残りは獲得票の少ない党に割り振るというわけのわからない案を提案するつもりなのだ。それもこれも自公政権にとって削減が大きく不利に働かないようにするため、少数党を残しておくこともその方が自らのためにも有利という党利党略のためであることなど明白なのだ。

本件に関しては、自公以外の野党の言い分も、違憲状態解消に関しては一致している。しかしそのためにも、この際、議員定数そのものを削減すべしという衆議院構成の抜本的な改革の必要性については、それぞれの与野党の言い分は大きく分かれている。比例区を削減されると議員が限りなくゼロになってしまう弱小政党は大反対だ。だからあのわけのわからぬ自民党案が出てくるのだが、まあここはともかくそれでやっておこうという案で与野党がまとまる可能性は高い。

そんな中、本件に関して一番筋を通した主張をしているのがみんなの党だ。渡辺代表、「違憲状態解消」だけが問題でなく、この際議員定数を大幅に削減し、全体の構成を根本的に改革するように選挙制度に改める必要があるということだ。そのためにも各党がそれぞれ抜本改革案を提示し、議論の上衆議院を解散し、それぞれの案について国民の信を問うべきだということだろう。私はこれを支持したい。

70議席削減の民主党案もそれに近いものだと理解している。民主党みんなの党はそれでいいが、問題は維新の会だ。この党、この問題についてどうするのかその対応が一向に見えてこない。選挙制度改革については橋下共同代表派と石原派では小選挙区制か中選挙区制かに根本的な違いがあるようだ。

この問題、それは単なる区割りの問題だけでない。国家の政治体制のあり方、ガバナンスに関わる問題なのである。問題は衆議院の区割り格差是正だけの問題でない。参議院にもその問題があるし、その参院自体の存在意義、参議院をどうするかの問題を含めて立法府国会をどう改革するのか、しないのか、それが一番問われていることを忘れてはならない。

そもそも秋の最高裁判決待ちだなどいうスタンスはやめてほしい。なんたる情けなさか。この問題、国会で最高裁の判決までに徹底的に議論し、最高裁の判決がどうあろうと、立法府国会自らがその改革についての議論を国民の前で展開してもらいたいのだ。それに関してそれぞれの党がその方針、主張展開論議の上、総選挙で決着をつけるのが筋ではないのか。これは国体のあり方そのものに関わる最重要問題なのである。それくらいのことであっていいはずだ。

こういう重要問題をいかにもうまくごまかしてしまうのが自公政権の真髄なのである。この際そういう政治状況から脱却するためにも、民主・維新・みんなの党など一致して選挙制度改革案を提示し、再度与野党逆転を掛けて総選挙に臨むくらいのことがあっていいはずだ。

各地高裁の違憲、選挙無効の報を受けて、日本のマスコミはそれみたことかとばかり、事態を異常だとか、この状況を解消するために即行動を起こせとか当たり前のことしか報道してない。国家のガバナンスに関わるこの問題、どうして与野党に立法府の抜本的、根本的な改革をめざして行動を起こすべきだとの論説を展開しないのか。

そもそもその状況からしてこんな事態になることはすでに分かっていたはずだ。なんでもそうなのだが日本の政治、日本の政治家、そして日本の有権者国民そのもの、今頃になって一斉に驚いてみせるところが情けないではないか。

今朝起きがけにふと思い出した狂歌一句がある。たしか、高校などで数学を学んだ方なら覚えておられるだろう。その覚え方、いろいろバリエーションがあるが、高校時代、数学の先生が「球の体積」を求める公式を覚えるために教えてくれたものだ。

今の国会立法府まさに異常、惨状状況だ。その体まさになっていない。「身の上に心配あーるの惨状は窮する体を見るにつけても」

なにしろ半径もなにもあったものでない場所によってそれが、10のところもあれば5のところもある始末なのである。

tad

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蛇足:球の体積を求める公式:(4π/3) × r^3

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